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![]() ラッセル英単語・熟語1500 |
私は、人間の問題で最も知られる価値があり、称賛される価値があるものは、共同体(社会)に関係あるものよりもむしろ個人に関係があるものであると考える。私は、人間の集合体が、そのいくつかの生命(人命)に含まれる価値以上に、独立した価値を持つとは信じてはおらず、国家、国民、教会あるいは、その他の集合体を称賛するために、歴史が個人の価値を無視するのは危険だと考えている。
I think that what is most worthy to be known and admired in human affairs has to do with individuals rather than with communities. I do not believe in the independent value of a collection of human beings over and above the value contained in their several lives, and I think it is dangerous if history neglects individual value in order to glorify a State, a Nation, a Church, or any other such collective entity. But I will not pursue this theme further for fear of being led into politics.
Source: Bertrand Russell: Portraits from Memory and Other Essays, p.189
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<寸言>
愛国心を強調する人については、その動機を疑ってみる必要があります(兵器産業から支援を受けている族議員の場合はわかりやすい動機を持っています)。
一般論として個人よりも国家を重視する人も、自分についてだけは国家よりも自分を重視していることが判明することもめずらしくはありません(徴兵制がある国における兵役逃れ)。愛国心を叫ぶ人は少し恐ろしげにみえたりしますが、「正体見たり枯れ尾花」で、実際は臆病であることがわかることもよくあります(瀬戸際政策を支持していても、実際に戦争が始まると責任を転嫁したり、遁走したりする人がいます)。
なお、patrotism(愛国心)と nationalism(国家主義、ナショナリズム)との意味の違いについて、数学者の藤原正彦氏は「ナショナリズムとは通常、他国を押しのけてでも自国の国益を追求する姿勢である。私はこれを、国益主義と表現する。パトリアティズムの方は、祖国の文化、伝統、歴史、自然などに誇りを持ち、またそれらをこよなく愛する精神である。私はこれを祖国愛と表現する。家族愛、郷土愛の延長にあるものである.」としています。
その人がその言葉(ここでは愛国心や patriotism)にどういった意味合いを持たせているかよく考えないと誤解の種となります。patriotism =「祖国愛」と思い込むと、ラッセルの次の発言はおかしなことになります。
【 Patriotism of the nationalistic type, so far from being taught in schools, ought to be mentioned as a form of mass-hysteria to which men are unfortunately liable, and against with ...
[国家主義的な型の愛国心は,学校教育で教えられなければならない型の愛国心とはかけ離れたものであり,人々が不幸にして陥りやすい集団ヒステリーの一形態だと言わなければならない。また,そのような愛国心(教育)に対し,知的にも道徳的に防備を固めなければならない。国家主義は疑いもなく現代の最も恐ろしい害悪である。
出典: ラッセル『教育と社会体制』第10章「教育における愛国心」]
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