
![]() ラッセル英単語・熟語1500 |
私達が身近にある物体を認識するとき、主観的には即座に与えられているように見えるものの多くは、実際は過去の経験に由来するものである。ある物体、例えば1ペニー硬貨を見たとき、私達はその「本当の」形状に気づいているように思われる。(即ち)楕円形ではなく、円形であるという印象を持つ(注:未知の物体であれば、視覚では楕円形に「見えても」、実際に見た経験があるものは、自動的に映像の補正が行われ、ここでは硬貨は、円形に「見てしまう」という現象)。
絵を描くことを学ぶには、知覚(perception)ではなく感覚(sensation)に従って物事を表現する技術を習得する必要がある。そして、見た目の印象は、その物体を触ったらどんな感じなのかといった感覚で埋められていく、等々(注:つまり、「感覚」と「知覚」とでは大きな違いがあるということ)。
When we perceive any object of a familiar kind, much of what appears subjectively to be immediately given is really derived from past experience. When we see an object, say a penny, we seem to be aware of its "real" shape: we have the impression of something circular, not of something elliptical. In learning to draw, it is necessary to acquire the art of representing things according to the sensation, not according to the perception. And the visual appearance is filled out with feeling of what the object would be like to touch, and so on.
Source: The Analysis of Mind, 1921
More info.: https://www.gutenberg.org/files/2529/2529-h/2529-h.htm
<寸言>
視覚だけでは正しい理解や認識を持つことは非常に難しいことがよくわかります。触覚や臭覚や味覚も含め、五感を動員することによって、より正しい理解や認識に近づくことが「可能」です。しかし、他の動物に比べ、人間の五感が一番優れているわけではありません。五感だけでなく、言葉と論理的思考の支援を得る必要があります。
経験と論理の両方が必要ということで、論理経験主義という思想や運動が生まれました。近い思想や運動として論理実証主義がありましたが、論理実証主義者は経験や経験的事実を軽視しすぎているという批判があり、それと区別するために論理経験主義が生まれたと言ってよさそうです。
#バートランド・ラッセル #Bertrand_Russell