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(表紙画像) このページには、採用パラドクスの中からいくつか選んで掲載します。オリジナル問題はほとんどなくて、9割以上は哲学・論理学・数学・社会科学の由緒正しい問題から採ってきたものですが、原典をアレンジしたり、解答・解説の方にひねりを加えたりと、私独自の工夫を凝らしています。 出典文献はここには挙げませんが本には記してあります。 解答・解説は、『論理パラドクス−論証力を磨く99問』をごらんになってください。 正解問題の傾向から運勢占いができるコーナーも、『論理パラドクス−論証力を磨く99問』巻末にあります。 (注)▼以下の問題文は、本そのものの文章とは細部に若干の違いがあります。 ★4枚カード問題 ウォーミングアップ。 テーブルに4枚のカードが置かれており、片面は文字、片面は数字であることがわかっている。そしてそれぞれ、愛、サ、26、13と書かれている。 @ 「漢字の裏は偶数である」という仮説が正しいかどうか確かめるためには、最低限、どのカードをめくればよいだろうか。 A 略 B 「漢字の裏が偶数である」が正しいかどうか確かめるためには、最低限、どのカードをめくればよいだろう。 ★4枚カードPart2 @ 赤と黒2枚ずつ、計4枚のカードを私がよく切って裏返しに並べる。あなたはそのうちの2枚を同時にめくる。2枚が同じ色であれば私の勝ち、違う色であればあなたの勝ち。負けた方が1万円支払う。さてこのゲームは公平だろうか、それともどちらかが有利だろうか。あなたはこのゲームに乗るか? A 略 ★同じ誕生日 23人を越えると、その中に誕生日が一致する人が含まれる確率が50パーセント以上になる、ということはよく聞く話だ。計算は次のようになる。(概算のために2月29日は28日に組み入れて一年365日としておこう) n人のうち同じ誕生日がない確率=365/365×364/365×363/365×362/365×361/365×……×(365−n+1)/365<1/2 となる最小のnを求めればよい。それが23なのである。 さて、いま、カルチャーセンターのこの部屋には14人の受講者がいる。講師である私を含めて15人だ。上の計算を受講者に示したあとで、私は言った。「……ですから、あと8人ほどいれば見込みありなわけですね。逆に言えば、この中の人どうしで誕生日が一致するかどうか賭けなければならないとしたら、そういう一致はない方に賭けるのが得なわけです」 「先生」一人の受講者が手を上げた。「計算の上ではそうなるように見えますが、僕はこの15人の中に誕生日が同じ人がいる可能性の方が高いと思います。賭けてもいいです」 「あなたはここにいる人たちの誕生日を知ってるんですか?」 「いえ、自分以外の誕生日は一つも知りません」 たしかに今日はカルチャーセンターの初日であり、この受講者は他の受講者の誰ともまだ面識がなさそうだ。それに私がこの誕生日の話をしたのは講義中に思いついた即興だったのだから、事前に下調べしていたとも思えない。 「よし、じゃあ賭けようじゃありませんか」 私たちは一万円を賭け、受講生のひとりひとりに誕生日を聞いていった。 ふむふむ、みんな誕生日はばらばらだ。しめしめと思っていたのだが、8人目に誕生日を聞こうとしたところで、私は突然、自分の敗北を悟った。 なぜあの受講生は自信満々に賭けに出られたのだろう? ★鏡の部屋 いま、われわれは妙なホールに閉じ込められている。全部で何人いるのか知らないが、一人一人がユニットに縛りつけられており、目の前に鏡がついていて、これが他の人たちの様子を映し出している。私の鏡には、私を含めて10人の人間がそれぞれユニットに縛りつけられた格好で映っており、それぞれの鏡を覗き込んでいるのが見える。 さて、鏡には次のような特徴があるとしよう。 A 鏡は、そのユニットに縛られている人間自身を映し出している。つまり囚われ人たちはみな、自分自身が鏡の中に見える。(ホール内の「見る」関係は反射的である) B xさんの鏡がyさんを映しているなら、必ず、yさんの鏡はxさんを映している。(ホール内の「見る」関係は対称的である) C xさんの鏡がyさんを映し、yさんの鏡がzさんの鏡を映しているなら、必ず、xさんの鏡はzさんを映している。(ホール内の「見る」関係は推移的である) この三つの条件が成り立っていることを私たちは知らされた。 @ ここから、ホール内でこの鏡付きユニットに縛られて囚われている者たちはみな、互いにホール内の全員を鏡の中に見ることができる、と結論してよいだろうか(盲人は含まれていないとする)。 答えと、理由も述べよ。 A 略 ★嘘つきのパラドクス @ あるクレタ人が言った次の文はウソかホントか、判定せよ。 すべてのクレタ人はウソしか言わない A 問い@をふまえて、次の文の真偽を判定せよ。 私は常にウソを言う B では次の文は真か偽か。 私のこの発言はウソである C 略 D では、次の文は真か偽か。Bと同じ答えでよいだろうか。 私のこの発言はホントではない E 略 F では、次の文はどうか。真だろうか、偽だろうか、真でも偽でもないのだろうか、それとも正真正銘の矛盾なのか。 私のこの発言はホントでもウソでもない G では、次の文は真か偽か。 私のこの発言はウソでありうる H では、次の文は真か偽か。 私のこの発言はホントでありえない I 次の文はどうか。 この文は無意味である ★外れない予言 @ 決して外れない予言、というものがある。どういう予言だろうか。 答え:「何かが起こるでしょう」「何かが起こらないでしょう」「これから雪が降るか降らないかどちらかでしょう」のような、どう転んでも必ず正しいはずのことを述べる予言を挙げた人は、不正解である。 A なぜ不正解なのか。 B 相手が決して逆らうことができない命令というものがある。どういう命令だろうか。 答え:「何かをせよ」「この瞬間に存在していろ」のような、命令を受ける者が言われなくとも当然なしたはずのことを命ずる命令を挙げた人は、不正解である。 C なぜ不正解なのか。 D では、@とBの本当の正解は何か。 ★必ず正解の出る質問 悪魔があなたに言った。 「これから質問を一つ考えよ。イエス・ノーで答えられる問題だ。そして街中に出て、100人にその質問をして、イエス・ノーで答えてもらえ。一人でも不正解者がいたら、おまえは直ちに地獄に落ちて、業火で永遠に焼かれるのだ」 通行人の中には、悪魔が送り込んだとてつもない愚か者が大勢混じっている。だから、「1+1=2ですか?」「日本一高い山は富士山ですか?」などと質問しても、不正解を出す者がいる可能性がある。 さて、地獄に落とされたくないあなたは、どういう質問をすればこの窮地を切り抜けられるだろうか。 ★矛盾した命令 便利屋の一郎が、顧客から次のような依頼を受けた。 「この家の中のネズミはすべて殺してください。ただし、この家の中のネズミは決して殺してはなりません」 「は……?」 そんな矛盾したことは不可能ではないか。一郎は途方に暮れたが、いろいろ考察・研究・調査・工夫した結果、この顧客の申しつけを見事にクリアした。 さて、この一見矛盾した依頼を一郎が実行できたのはどうしてだろうか。 ★二人の受講生 @ A教授の講義には、二人の学生しか受講していない。今、講義の始まる直前にあなたが教室を覗き込むと、一人の女子学生が着席していた。もう一人の受講生も女である確率はいくらだろうか。ただしもともと受講申請のできた学生数の男女比は1:1であるものとする。 A A教授の講義には、二人の学生しか受講していない。A教授に、「受講生に女子はいますか」と尋ねると、「いる」という答えだった。A教授はウソをつかないものとする。ふたりとも女子である確率はいくらだろうか。もともと受講申請のできた学生数の男女比は1:1であるものとする。 ★男の子と女の子 前問をふまえて、次の問いに答えよ。 @ 引越してきた隣家の子どもは二人で、1人は男の子であるという。ふたりとも男の子である確率は? A 引越してきた隣家の子どもは二人で、窓から男の子がひとり顔を出しているのが見える。ふたりとも男の子である確率は? B 引越してきた隣家の子どもは二人で、ベランダに子供靴が干してあるのが見え、「としひこ」と男子の名が書いてある。ふたりとも男の子である確率は? ★3囚人問題(ベイズの定理2) @あなたは囚われた3人の政治犯(1号〜3号)のうちの1人、3号である。 3人とも罪の重さは全く同じだが、2人が銃殺され、1名だけは、将来の政治的変化に備えて釈放するという。 その1人はすでに決定されたというが、何号であるかはわからない。 他に情報は一切ない。 さて、あなたが釈放される確率はいくらだろうか。 Aあなた(3号)は看守を買収して言った。 「2人銃殺ってことは、私以外の2人のうち、少なくともどちらかは銃殺されるはずですね。銃殺されるのが何号なのか、教えてくださいよ。私については何も教えてくれなくていいですから」 看守は答えた。「2号は銃殺されるよ」 看守はウソをつかないものとする。さて、あなたが釈放される確率はいくらだろうか。 その答えの理由も述べよ。 B あなた(3号)は看守どうしが話しているのをたまたま立ち聞きした。 「2号に買収されたんだよな。自分以外の二人、1号と3号のうち銃殺されるやつの名を教えてくれってさ。どうしようか」 「ま、どうせ2号は銃殺されるんだから、冥土の土産に頼みを聞いてやれよ」 看守はウソをついていないものとする。さて、あなたが釈放される確率はいくらだろうか。 その答えの理由も述べよ。 C あなた(3号)は1号が看守を買収しているのをたまたま立ち聞きした。 「私を除いた2人のうち、少なくともどちらかは銃殺されるはずですね。銃殺されるのが何号なのか、教えてくださいよ。私については何も教えてくれなくていいですから」 看守は答えた。「2号は銃殺されるよ」 看守はウソをつかないものとする。さて、あなたが釈放される確率はいくらだろうか。 その答えの理由も述べよ。 ★モンティ・ホール・ジレンマ(ベイズの定理3) 閉じたドアのうち一つにはその向こうに美女がおり、他の二つの向こうには飢えたライオンがいる。あなたはドアの一つを選ばねばならず、その向こうにいるものと一夜を過ごすことができる。むろん、ライオンのドアを選んだ場合は食い殺されることになるのだ。(女性解答者用には「美女」の代わりに何を用意しましょうか。「美男」でいいですかね?) あなたはドア3を選んだ。見物していた王様は「なるほど」と頷き、「残りのドア2つのうち、『外れ』を一つ見せてやろうぞ」と言ってドア1を開けてみせた(この王様はこの「ドア遊び」ではいつもこうしてみせるのであり、特にあなたへの好意や悪意から開けてみせたのではない)。そこにはライオンの檻があった。「さて、ここで変更の権利を与えよう。おまえは残りのドアのうち、始めに選んだドア1に固執してもいいし、もう一つのドア2を選び直してもいいぞ」 あなたはどうするのが得だろうか、美女を獲得する確率を増やすには? ドア3を選び続けるべきか、それともドア2に変えるべきか、それともどちらでも同じなのか。 ★予知能力 あなたの目の前に、3匹の子犬がいる。あなたにそのうちの一匹をあげよう。自由に選んでよろしい。私はあなたがどの犬を選ぶかをすでに予知している。私はご覧のとおり離れているからもう犬に手を触れることはできない。さあそれでは、あなたが選んだ犬を抱き上げていただきたい。……なるほどやっぱりその犬でしたか。その犬の首輪を見てください。ほうらね、「あなたはこの犬を選ぶだろう」と書いてあるでしょ。え? いいですよお確かめください。ほかの2匹の首輪には何も書いてないでしょ。あなたがこの犬を選ぶと私は予知して、この犬だけに書いておいたわけですよ。 問題:私はどうしてあなたの選択を当てることができたのだろう? 本当に予知能力だろうか、それともむしろ私が念力であなたの選択を導いたと考えるべきだろうか。それとも他の説明がありうるだろうか。 ★約束のパラドクス 次の三つのことは正しいと認められるだろう。 A ある人が、行為aをすると約束したならば、その人はaをする義務を負うことになる。 B aをする義務を負っているならば、その人は、aを行なうことができるはずである。(すなわち、誰も、不可能なことを行なう義務はない。) C 人はしばしば、できないことをすると約束してしまう。 さて、この一つ一つは正しいように見えながら、三つ合わせると矛盾が生ずる。例えば、Cの例として、政治家が不可能な政策を約束することはよくある。Aにより、約束したからには政治家はその政策を実行する義務を負っているはずだが、Bによれば、できないことを行なう義務はないのである。こうして、政治家は、約束したことを行なう義務があるとともに義務がないという妙なことになってしまう。 A,B,Cのどれかに問題があると思われるが、どれがどうおかしかったのだろうか。 ★義務のパラドクス 義務について、次の二つの原理は正しいと認められるだろう。 A 「行為aをする」ことが義務であり、「行為aをしたら行為bもする」ことが義務であるとする。その場合、当然、「行為bをする」ことは義務となる。 B 「行為aをすること」と「行為aをしないこと」の両方ともが義務であることは決してない。 さて、次の場合を考えよう。 1 あなたは、「Fさんに借金返済の振込みをする」義務がある。 2 「Fさんに借金を振り込んだら、振り込んだとFさんに告げる」義務がある。 3 Fさんに借金を振り込んでいないなら、振り込んだという嘘をFさんに告げてはならない。(つまり、Fさんに借金を振り込んでいないなら、「振り込んだとFさんに告げない」義務がある。) 4 あなたはFさんに借金を振り込んでいない。 Aによると、1と2から、あなたは「振り込んだとFさんに告げる」義務があることになる。……@ また、3と4から、あなたは「振り込んだとFさんに告げない」義務があることになる。……A Bによると、「振り込んだとFさんに告げる」義務があり、かつ「振り込んだとFさんに告げない」義務がある、ということは決してない。……B @+AとBとは矛盾している。さて、どこが変だったのだろう? A,Bのどちらかが間違いなのだろうか、それとも別のところに問題があるのだろうか。 ★スマリヤンのパラドクス 殺人が成り立つためには、次の条件が必要だろう。 (1)殺人者の行為が、被害者の死の原因となっている。 (2)殺人行為には、殺人をした者がいる。 (3)殺人者の行為があったことにより、行為がなかった場合よりも被害者の死期は早められる。 @ 上の(1)(2)(3)のうち、疑わしいと思うものはあるか。あれば、それが成り立たないような殺人とはどういうものか。 A 砂漠をさまよう太郎、次郎、三郎が、それぞれ別々の方向へ歩くことにした。太郎は三郎に恨みを抱いており、別れる前夜にこっそり三郎の水筒に無味無臭無色の致死量の毒を注入しておいた。次郎も三郎を憎んでおり、太郎の直後に、太郎の行為を知らぬまま、三郎の水筒にやはり致死量の毒を入れておいた。次郎の毒は、太郎のとは違い、強い臭いと味と色のついた毒だった。 こうして別れた後、三郎は、水筒の中が汚染されていることに気づき、水が飲めずに喉の渇きにより死んだ。 さて、誰が三郎を殺したのだろう? (1)(2)(3)をすべて満たすような殺人は行なわれていないように思われる。太郎が殺人犯なのだと考える場合と、次郎が殺人犯だと考える場合のそれぞれについて、次のどれが成り立つことが必要だろうか。 A (1)が間違っている。 B (2)が間違っている。 C (3)が間違っている。 B では結局、三郎を殺した犯人は誰なのか? ★瓶の中の小鬼 この状況設定は、ロバート・スティーブンソンの小説『瓶の中の小鬼』による。 中に小鬼がいる瓶がある。この瓶は決して割れない。この小鬼は、瓶の所有者の願いを何でも何度でも叶えてくれる。ただし、この瓶を所有しているあいだに所有者が死ぬと、彼は永遠に地獄の業火で焼かれ苦しむこととなる。この瓶を手放すには、他人に売るしか方法はない。捨てても捨てても、この瓶は持ち主のところに戻ってくるのである。瓶を売るには3つ条件がある。 1.自分が買った値段より安い値で売ること。 2.上記のようなこの瓶の事情をすべて買い手に説明すること。 3.買い手には、合理的な判断で買ってもらうこと(脅迫や錯覚や騙しによって売りつけてはならない。そのようなことをすれば、瓶は売り手のところに戻ってくる)。 さて、この瓶を、1円で買うことは合理的ではない。なぜなら、買い手は瓶をもはや売ることができず、死ぬまで所有して地獄で焼かれることになるからだ。(簡略のために、通貨は円に限られることにしておこう。また、小鬼が叶えられる願いは、この瓶の事情に関わるものは含まれない。つまり、永遠の生をくれとか、地獄に落ちないようにしろとか、1円より下の0.5円硬貨を創り出せとかいった願いは叶えることができない。) さて、1円で買うことが合理的でないということは、1円で買う人が誰もいない、逆に言えば誰も1円で売ることができないということである。よって、2円で買い取ることも合理的でない。2円で買った人は、必然的に、地獄に落ちることが決定してしまうのだ。 一般に、n円で合理的に買うことができないならば、その値段で売ることができないということだから、n+1円で買うことも合理的ではない。1円で買うことが合理的でないのだから、数学的帰納法により、1,2,3,……なるすべてのnについてこの瓶をn円で買うことは合理的でない。つまりいくらであれ買うこと自体が合理的でないのだ。 しかしいま、あなたが、この瓶を十万円で買わないか、と言われたら、直観的に、買った方が得だと感ずるのではないか。なにしろ小鬼に頼めば、競馬で十万円以上取り戻すこともできるし、その他食べ放題飲み放題やり放題なのだ。大いにいい思いをしたところで、誰かに九万五千円くらいで売ることも難しくないだろう。買った方が得だということは、買うのが合理的ということだ。 @ 十万円なら買うのが合理的という直観と、先の数学的帰納法による「買うな」という結論とは矛盾する。どちらが正しいのだろう? ★インスペクション・パラドクス @ バスが12時間に72本、つまり平均10分に1台の割合で運転している。バスは交通事情に左右されるから、正確に10分に1台到着するわけではない。ほんの2〜3分で次のがくることもあれば、15分もこないこともある。しかし午前8時から午後8時までの間に72台という本数は守られている。あなたは毎日不規則な時刻に出勤・帰宅するので、バス停に着くのは午前10時のこともあれば午後7時のこともある。つまり、バスが来るタイミングと、あなたの到達時刻とは相関関係はない。さて、明日の出勤時にあなたはどのくらいの時間バスを待つことになるだろうか。予想が当ったら10万円もらえるとして、あなたは次のうちどれを選ぶか。その理由も述べよう。 A 5分より長い B 5分より短い C 5分以上か以下か可能性を推測する手掛りはないので適当に決める A @の答えは、地球外文明の存在について、どんなことを示唆しているだろうか。次の中から、最も可能性の高そうなものを選べ。 A 地球よりはるかに進んだ文明が存在するない B 地球文明は最も進んだ文明の一つである C 地球外文明は存在しない ★投票のパラドクス @ミスコンテストの最終候補として、美女A、Bが残っている。選考会で、五人の選考委員V1,V2,V3,V4,V5が、最終候補者二人について投票を行なった。選考委員は各々、「スマイル(性格美)」「フェロモン(肉体美)」「ウィット(知性美)」という同等の重みを持つ三つの要素についてA嬢、B嬢どちらが優れているかを判断し、総合得点の高い方を推薦する。多くの選考委員に推薦された方の候補者が、優勝者となるのである。 投票の結果、V1,V2,V3がB嬢を推薦し、V4,V5がA嬢を推薦したことがわかった。多数決により、Bの優勝が決定したのである。 しかし、後に選考会の結果が吟味されたところ、「スマイル」「フェロモン」「ウィット」のどれについても、A嬢の方がB嬢よりも多くの選考委員の支持を受けていたことがわかったのである。はて、そんなことがありうるだろうか? 次の表をABいずれかの名で埋めて、そのような事態の例を描いてみよう。 選考委員 評価基準 推薦 スマイル フェロモン ウィット V1 ( ) ( ) ( ) B V2 ( ) ( ) ( ) B V3 ( ) ( ) ( ) B V4 ( ) ( ) ( ) A V5 ( ) ( ) ( ) A 高得点者 A A A B(優勝) A これは、客観的に劣っていると判定された女性が優勝し、客観的に優れていると判定された女性が落選したことを意味する。しかし、選考はフェアに、多数決でなされたはずだ。この矛盾は次のうちどれを示しているだろうか? 1 評価基準を細分化することはできない。 2 物事の優劣には客観的な基準は存在しない。 3 客観的な優劣は、性質によるものと、多数決に反映されるものと二通りある。 4 こういう矛盾が出た以上、5人の選考委員のうち誰かが判断ミスをしているはずだ。 5 民主的な多数決投票という決定手段には欠陥がある。 ★二重効果のジレンマ @ 山奥の診療所に事故に遭った人が6人運ばれてきた。みな瀕死の重症で、今夜中に適切な処置をしないと間違いなく死ぬ。6人のうち5人は似たような負傷で、一つの装置Aを使うことでいっぺんに治療することができる。残りの一人は全く異なる部位の負傷なので、別の装置Bで治療しなければならない。ところが医師は一人しかおらず、AとBを同時に操作することは不可能だ。応援も頼めない。さて、医師はどうしたらよいか。(患者の年齢、性別、職業等については問題の本質には関係ナシとして無視してください) A ある医師が、瀕死の末期癌患者を五人担当している。そこへ健康診断のために一人の患者が訪れた。この一人の患者の健康な臓器を五人に分配すれば、五人は助かる。医師はその一人に麻酔をかけて臓器を取り出し、一人の命と引き換えに五人を救った。 前問で見たとおり、五人の命の方が一人の命より大切であることは当然である。では、医師は正しいことをしたのだろうか。多くの人が正しくないと感じるはずだ(正しいと感じる人はそれこそ病院に行った方がいい)。では、なぜ正しくないのか。@と食い違う結論になったのはなぜか? B ブレーキ故障のため暴走した列車が、線路上の五人の作業員を今まさに轢こうとしている。五人は全く列車に気づいておらず、もう退避は不可能だ。運転士は、脇の引込み線に曲がることを決意した。そちらには一人の作業員がいるのが見えたが、運転士は五人を救うためあえて引込み線に突っ込み、一人を轢き殺した。 運転士は、正しいことをしたと多くの人が認めるだろう。いや正しくない、と言う人も、やむをえなかった、あるいは、さほど悪くない、とは認めるはずである。少なくとも、前問Aの医師と比べると、この運転士の行為は悪さの程度がはるかに少ない(もしかしたら積極的に「よい」とすら言えるかもしれない)。実際、日本の法律では(他のほとんどの国の法律でも)、Aの医師は殺人罪に問われるが、この運転士は起訴されることもないだろう。 さて、その違いの根拠は? まず、運転士の事例と医師の事例との、「悪さ」の相違を生み出しているらしい要因をできるだけたくさん考え出してから、C以下の諸問題を読み進めてください。 C〜O略 ★ドーピング @オリンピックや世界選手権などスポーツの世界では、ドーピングが発覚すると、記録は抹消される。しかし、たとえば、ミュージシャンやアーチストが麻薬や幻覚剤を用いて作品を作ったことが判明しても、その作品は芸術史から抹消されはしない。この違いはなぜだろうか? |