「新刊パズル紹介no.3」

三部作すべての総合索引

(二見書房、2004年10月2日刊)
『心理パラドクス−錯覚を活用するための101問−

目次  採用問題集  評価軸について

「まえがき」

 心――直観や錯覚――にまつわるパラドクス。それが本書のモチーフです。
 哲学や科学の有名な諸問題をリンク付けて体系化した問題集という点では、前著『論理パラドクス』『論理サバイバル』と同じですが、視点というか、出題方法が異なっています。
 第一に、パラドクスの解決を読者に直接求めた『論パラ』『論サバ』に対し、本書では、解決以前の「問題の成り立ち」をたびたび問いかけました。つまり、各問題の表題になっている「心の会計簿」「パーキー効果」等々といった学術用語を知る人にとっては、知識だけで解ける問題が大半を占めています。一方、そうした用語を知らなかった人は、頭を使いながらパラドクスを自ら構成する楽しみを味わえるでしょう。
 第二に、読者自身がではなく大多数の人はどう考えるか、を推測してもらう「クイズ100人に聞きました」方式の質問が多いこと。哲学・論理学中心だった『論パラ』『論サバ』に比べ本書でクローズアップした認知心理学、行動経済学、社会生物学といった分野では、人間の錯覚や愚行を実験的に検証した統計データが蓄積されており、〈論理と心理とのズレ〉が新たな関心を呼んでいます。自分自身いかに合理的な考え方をしていようとも、他者も同じく合理的に考えるかどうかを予測できなければ、合理的に生きられはしないのが現実。そこで、「クイズ100人形式」をたくさん採用したのです。
 この2つの方針――問題の解決よりも問題の形成、正解そのものよりも「正解と思われがちな答え」に向かう基本姿勢ゆえに、本書は、『論パラ』『論サバ』に続く第三巻でありながら、最初に読んでいただくのにふさわしい「基礎固め編」だとも言えるでしょう。
 専門家の意見が一致しない未解決問題や、私が作ったオリジナル問題も含まれているほか、069【アレのパラドクス】のように、通説が間違っているという指摘も行なってみました。史上最高のパラドクス全集の画期的完成をここに誇示することが許されると思うのですが、そのあたり、これから読者が中に入ってたっぷりお確かめください。