バートランド・ラッセルの英語ー「同じような」の"as"がどうして「譲歩」の意味で使われるのか?
佐藤ヒロシ『and と as の底力』(プレイス、2015年刊)pp.196-198から引用
次の例のように、「譲歩」の意味では、構造的に形容詞(もしくは副詞や名詞)が"as"に先行するという特徴があります。
Strange as it may seem, in order to find descendants of the dinosaurs in today's world, we need to turn to birds.
(奇妙に思われるかも知れないが、現代世界で恐竜の子孫を発見するためには、鳥に目を向ける必要がある。)
ところで、「様態(~のように)」「比例」「理由」と異なり、「・・・であるにもかかわらず」という「譲歩」は、どう考えても「同じようなこと・もの」とは真逆の意味になります。・・・。次の文で考えてみよう。
Tired as she was, she walked to the station instead of taking a taxi.
(疲れていたが(疲れていたにもかかわらず)、彼女はタクシーに乗らずに駅まで歩いた。)
実は、「譲歩の"as"」とは、構文的には(Being as) tired as she was という分詞構文がベースになっています。・・・。(つまり)"as"自体に「譲歩」の意味があるわけではないのです。・・・。
アメリカ英語では最初の"as"が残っている場合があります。
As hard as she tried, she could never convince her parents to let her have a dog.
(いくら頑張っても、彼女は両親を説得して犬を飼う許しを得ることができなかった。)
なお、次の例のように、主節との関係によっては「理由」を表すこともあるので要注意。
Tired as she was, she went to bed earlier than usual.
(疲れていたため、彼女は普段よりも早く床についた。)
1.ラッセルの用例
ラッセル英単語・熟語1500 |
[それゆえ,難しいかも知れないが,このことに関しては,子供をほうっておくべきである。]
出典:ラッセル『教育論』第二部_性格の教育_第12章「性教育」
For this reason, paradoxical as it may seem, a man of wide and vivid interests finds less difficulty in leaving life than is experienced by some miserable hypochondriac whose interests are bounded by his own ailments.
[それゆえ、逆説的に聞こえるかもしれないが、広く生き生きとした興味を持っている人のほうが、自分の心身の不調にしか関心のない惨めなヒコポンデリー(心気症)患者よりも、この世を去ることに困難を覚えることが少ない。]
出典:ラッセル『教育論』第一部 教育の理想_ 第2章「教育の目的」
All this is well known, and yet, incredible as it may seem, the governments show a rooted opposition to all serious attempts to prevent war.
[これらのことは皆よく知られていることであるが,信じ難いことかもしれない が,各国政府は'戦争防止'のためのあらゆる真剣な試みに対し,いまだ根深い反 対の態度を示している。]
出典:ラッセル『アメリカン・エッセイ集』の中の「政府は戦争を望んでいるのか?」
2.参考例
As poor as he was, he still had enough for his family to eat.[貧しかったが、彼は家族が食べていくだけの蓄えはあった。]
出典:佐藤ヒロシ『and と as の底力』p.197
★ 次のようなパターン(命令文)もある。
Try as you will, you can't do it in an hour.
→ Try as you will try(やりたいようにやってみよ)
[どんなにやっても、それを1時間ではできない。]
出典:佐藤ヒロシ『and と as の底力』p.198