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バートランド・ラッセル 私の哲学の発展 14-22 (松下 訳) - My Philosophical Development, 1959, by Bertrand Russell

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第14章 普遍者、個別者、固有名 n.22 - 関係的事実の実在


ラッセル英単語・熟語1500
 事実を主張する文から、その文の主張する事実に移る時(に)、我々は、いったい文のいかなる特質が -もしそのような特質がある場合- 主張された事実に属さなければならないか(について)自問してみなければならない。(まず)関係的事実というものが存在することはまったく明らかである。 (たとえば))「フィリップはアレキサンダー大王の父親であった」や「アレキサンダーはシーザー(カエサル)に先行した(先に生まれた)」は、明らかに世界に関する事実を主張している。(ただし、)観念論者達は、関係(なるもの)(人間の)精神の作り出したものであるといつも主張した。 たとえば(観念論者の)カントは、実在するものは空間や時間のなかにはなく、空間的=時間的順序は我々人間の主観的道具立て(subjective apparatus)によって創り出されたものであると考えた(想像した)。しかし、関係についてのこの見解は全て誤まった論理(学)に基づいているものであり、それ(その見解)がどういう帰結をもつかを見通すことができなかった人々によってのみ受けいれることができたのである。私としては、「AはBよりも(時間順は)早い」というような関係的事実が存在することは、他のいかなることにも劣らず確実(s certain as anything can be)であると考える。しかし、(そのことから) 「より早い」という名を持つ対象が存在するといえるだろうか?(follow that) そのような問いがどう意味であるかを明らかにすることは非常にむずかしい。また、そのような問いにいかにして答を見つけることができるか理解することはもっと困難である。確かに、構造を持つ複合的な全体(なるもの)は存在し、そうして、我々は関係語なしには構造を記述することはできない。しかし、これらの関係語によって指示される何らかの存在を、しかもそれを具体化している複合体の外に一種の(はっきり見えない)影のような存立(subsistence)を持ちうるような存在を、見つけようと試みるならば(try to descry)、我々がそれに成功できるということはまったく明らかではない。私が明らかだと考えることは、前にも述べたが、言語についてのある(ひとつの)事実である。即ち、<>関係語は実際に関係づける(働きをなす)ものとしてのみ用いられるべきであり、また、そういう語(関係語)が主語として現われるような文は、関係語が諸項の間の関係を指示するというその固有の機能を果たしている文に翻訳可能である場合にのみ、有意義(significant)である、ということである。 あるいは、別の言葉でいえば、動詞は不可欠であるが動名詞は不可欠ではないということである。これでは、まだ形而上学的問題への答えではないが、私が知っていやり方において、解答に近づいている(と考える?)。

Chapter 14, n.22

When we pass from the sentences asserting facts to the facts which they assert, we have to ask ourselves what characteristics of the sentences, if any, must belong to the facts asserted. It is quite clear that there are relational facts. The sentences, ‘Philip was the father of Alexander' and 'Alexander preceded Caesar', clearly assert facts about the world. Idealists used to say that relations are the work of the mind ; and Kant imagined that real things are not in space or time, but that spatio-temporal order is created by our subjective apparatus. But this whole view about relations was based upon a faulty logic and could only be accepted by those who failed to see its implications. For my part, I think it as certain as anything can be that there are relational facts such as 'A is earlier than B'. But does it follow that there is an object of which the name is 'earlier'? It is very difficult to make out what can be meant by such a question, and still more difficult to see how an answer can be found. There certainly are complex wholes which have a structure, and we cannot describe the structure without relation-words. But if we try to descry some entity denoted by these relation-words and capable of some shadowy kind of subsistence outside the complex in which it is embodied, it is not at all clear that we can succeed. What I think is clear is a fact about language, namely, as was suggested earlier, that relation-words ought only to be employed as actually relating and that sentences in which such words appear as subjects are only significant when they can be translated into sentences in which the relation-words perform their proper function of denoting a relation between terms. Or, as it may be put in other words: verbs are necessary, but verbal nouns are not. This does not answer the metaphysical question, but it comes as near to giving an answer as I know how to come.
(掲載日:2022.02.17/更新日: )