三浦俊彦による書評

★ 小林亜津子『看護のための生命倫理』(ナカニシヤ出版)

* 出典:『読売新聞』2004年11月28日掲載


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 消極的安楽死、積極的安楽死、間接的安楽死、慈悲殺。この四つをあなたは区別できますか? この種の概念に暗いと、生命倫理の議論には参加できないだろう。
 安楽死のほか、減胎手術、ヒト・クローン、代理母、出生前診断、宗教上の理由による治療拒否など、微妙な問題をストレートな論述で。読者をナースに見立てた問いかけ口調には、教育者としての情熱が響く。
 著者自身の価値判断はあえて抑え、既成の賛否諸説を例題とともに掲げて考えさせる実用教科書風だが、やや保守的と思しき著者の見解がふと滲み出る瞬間が面白い。
 政治的含みの濃い問題を重視したのも、本書の成功の理由だろう。生体移植のような、身近ながらマイナーな主題には触れず、「医療資源の配分」といった専門的テーマを優先したのも、たぶん正解。応用倫理学入門時の、効率よいテーマ選択の基準を示してくれたという意味でも、教えられる一書だ。

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