書評目次
三浦俊彦による書評
★ 福江純『〈見えない宇宙〉の歩き方』(PHP新書)
★ ジョエル・アカンバーク『人はなぜ異星人を追い求めるのか』(太田出版)
* 出典:『読売新聞』2003年10月26日掲載
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科学は一つなので、科学の啓蒙書は特色作りにさぞ苦労することだろう。天文学のような新発見が相次ぐ分野すら例外ではあるまい。
『〈見えない宇宙〉の歩き方』は、「見えない宇宙現象」という切り口でアイディア勝負に出た。なるほど。火星大接近に流星群に、見えるものはすぐ脚光を浴びるが、謎解き科学の本領は見えないものを相手にしてこそ発揮される。系外惑星、ブラックホール、ダークマター、ニュートリノ、重力波……。観測困難な対象が次々紹介される章立ては、まさに、科学ファンの好奇心という見えない波動を増幅する高感度装置さながらだ。同じPHP研究所から続けて出た『「見えない星」を追え!』(ロバート・フット著)も、不可視の諸現象を「ミラーマター」という新概念でくくって解説してくれている。
さて、その二冊が論じていない「見えない現象」がある。しかも私たちにとって最も気がかりな、姿なき現象が。そう、異星人である!
地球外には、文明はおろか、原始的な生命の形跡すらまだ発見されていない。これはどうしたことだろう。コペルニクス原理によれば、地球は特別な場所ではないはずなのに。
異星人探索の現状の詳細なレポートが『人はなぜ異星人を追い求めるのか』である。取材対象は、電波望遠鏡で文明の信号を探すSETI(地球外知性探査)と、異星人はもう地球に来ていると信ずるUFO研究団体。前者は科学、後者はオカルトという区別を本書は明確にしているが、著者独特の皮肉な人物描写にかかると、科学と非科学の境目がわからなくなってくる。銀河系内に多数の文明があると信じながらUFOを異星人の証拠とは断じて認めない科学者たちの方が、矛盾した信仰に染まっているようにも見えるのだ。いっこうに姿を見せない隣人を呼び求める人々の悲喜劇を、臨場感たっぷりに描き出した最上の読み物である。
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