九十年代は、「何でもあり」の時代である。ただし、単に価値観の多様化とか、価値基準の喪失とかいう漠然とした雰囲気として納得しあっていたのは八十年代までの話。九十年代の特徴は、この「何でもあり」的風潮を自覚的なキーワードとして制度的に登録し、ひとつの理念として対象化する中から、新世紀への出発点を模索しようとしていることだろう。「何でもあり(バーリ・トゥード)」という言葉自体は、グレイシー柔術などのアルティメット系格闘技の世界から世間に流布し始めたものだが、いまやこのノリの理念があらゆるサブカルチャーで隆盛をきわめている。