三浦俊彦による書評

島泰三『はだかの起原』(木楽舎)

* 出典:『読売新聞』2004年10月31日掲載


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 あのダーウィンの論証がいかにインチキか、という批判がのっけから。あれれ、大丈夫かな(もしやトンデモ本?)……と読んでいくと、なるほど、ヒト科の中で毛皮を失ったのは現生人類だけ、という話。
 毛を失うと、保温や防虫ができず、生存上きわめて不利。そんな進化は、「適者生存」で説明できない。進化論には穴があるのだ。こうして著者は、「重複する偶然」による「不適者の生存仮説」を唱える。
 「裸化に利点はない。しかし、裸化した人間が成功した理由は、裸化にある」。こんな禅問答めいた警句も飛び出す。自然淘汰に反していながら結果的に繁栄をもたらすような、一見、目的論的な変異は、ダーウィニズムと矛盾するわけではない。矛盾を強調する著者の口調は、やや読者を惑わすところがある。それも挑発の技巧だ、と割り切って読める読者にとっては、人類発祥への熱い思索を掻き立ててくれる素晴らしい啓蒙書だ。

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