ストーカーを描いたテレビドラマが複数、同時放映されていたことがあった。恋の激情にまかせて行動するストーカーにより主人公は家庭や日常生活を破壊されるが、ストーカーが一転して自暴自棄による自傷・自殺行為に走るや、主人公は超人的な優しさを発揮し、身を挺してストーカーを救おうとする。ストーカーが復活すれば再び自分を窮地に陥れるだろうことがわかっていながらも。これもちろんお茶の間娯楽の御都合主義、いかにもリアリティに欠けていた。が、あえて解釈すると、平凡善良な市民の中に潜む無垢の渇望が、現実の逸脱的人物と無意識の同一化を果たしていくことの表現だ、とも読めたかもしれない。