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「(週刊)バートランド・ラッセル(1872.5.18-1970.2.2)に関するメール・マガジン」
  no.0877_2024/03/23 (2006/12/21 創刊/毎週土曜 or 日曜日 発行)

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    ■ 目 次 ■
          
 1.ラッセルの著書及び発言等からの引用
 2.ラッセルに関する記述や発言等
  編集後記


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 1.ラッセルの著書や発言等から
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■「ラッセルの英語」n.2640~2643  を発行しました。
  (1)「ラッセル英単語熟語」は、2640-2643
  (2)「ラッセルの英文」は、n.2640-2, 2643-2
 
 1つずつ再掲します。

■■ バートランド・ラッセルの英語 n.2642R英単語熟語 avert
     
★  avert [(vt) ()考えをそむける,そらす;(危険などを)避ける;防ぐ]

* 語源:ラテン語の"apertus"(方向を変える)に由来。"ab"(~から)+
"vert"(向きを変える)
* avert one's eyes from ~から目をそらす
* averse (adj.):(~を)嫌って,(~に)反対して
* aversion (n):嫌い,(強い)嫌悪;いやなもの(人)


1.ラッセルの用例

But like a rabbit fascinated by a snake we stare at the peril without
 knowing what to do to avert it.
[われわれは蛇に狙われた(にらまれてすくまされた)兎のように,それを避け
る方法を知らないので,ただその危険のせまってくるのをじっと眺めているだ
けである。]
 出典:ラッセル『原子時代に住みて-変わり行く世界への新しい希望』第一
部第1章「現代の困惑」
     https://russell-j.com/cool/42T-0101.HTM

All, equally, are in peril, and, if the peril is understood, there is
 hope that they may collectively avert it.
[すべて(の集団)が同様に危機にあり,その危機が理解されれば,ともにそれ
を避ける望みがあります。]
 出典:ラッセル「人類の危機(1954.12.23)」
     https://russell-j.com/MansPeril.htm

But although our reason tells us we ought to shudder at such a 
prospect, there is another part of us that enjoys it, and so we have 
no firm will to avert misfortune, and there is a deep division in our
 souls between the sane and the insane parts.
[しかし,我々の理性は,このような予感にたいして身ぶるいしなければならな
いと教えるが,我々の中にはそれを喜ぶ気分もある。それゆえ,この不幸(災禍)
を是非とも避けるようにしなければならないという固い決意を我々は持ってい
ないのである。]
 出典:ラッセル『原子時代に住みて-変わり行く世界への新しい希望』第1
部第1章「現代の困惑」
     https://russell-j.com/MansPeril.htm

I became a professor at the University of California at Los Angeles. 
... The academic atmosphere was much less agreeable than in Chicago; 
the people were not so able, and the President was a man for whom I 
conceived, I think justly, a profound aversion.
[私は,カリフォルニア大学ロサンゼルス校の教授になった。・・・。学問的雰
囲気は,シカゴ大学よりもはるかに感じの悪いものだった。(カリフォルニア
大学ロサンゼルス校の)教員たちはそれほど有能ではなかったし,学長は -私
の見方は正しいと思うが- 私が大いに嫌悪を感じる人物であった。]
 出典:ラッセル『自伝』第2巻第6章「アメリカ(1938~1944)」
     https://russell-j.com/beginner/AB26-020.HTM


2.参考例

Fortunately the crisis has been averted.
[幸い危機は回避された。]
 出典:宮川幸久『英単語ターゲット1900(四訂版)』p.393

She averted her eyes from the terrible sight of the accident.
[彼女は事故の恐ろしい光景から目をそらした。]
 出典:『新版完全征服データベース5500 合格 英単語・熟語』p.289

To avert a flood, they quickly opened the dam.
[洪水を防ぐために、彼らはすぐにダムを開いた。]
 出典:『キクタン super 12000』p.213

An accident was averted by his quick thinking.
 出典: Longman Dictionary of Contemporary English, new ed.


■■  ラッセルの英語(2) n2643-2 ラッセルの英文

 ラッセル『ヒューマン・ソサエティ-倫理学から政治学へ』
  (Human Society in Ethics and Politics, 1954)

 第1章 n.14

 議論(論拠)の第三は、これまで存在してきたいかなるタブー道徳において
も、戒律の中には積極的に害を及ぼすような教え(戒律)がいくらかあり続け
てきた -時にはかなり有害なものがあった- というものである。たとえば、
「魔女(女性の魔術師)は、これを生かしておいてはならない」という聖書の
テキスト(一文)を考えてほしい(「出エジプト記」第22章18)という。この
一文のために、ドイツだけでも、1450年から1550年までの一世紀の間に約十万
人の魔女が殺害された。魔女信仰はスコットランド地方で特に広く信じられ、
イングランド地方ではジェームズ一世によって奨励された(注:魔女の存在を
認めることを奨励し、魔女を弾圧した)。『マクベス』が書かれたのはジェー
ムズ一世にお世辞をいうためであり、魔女はそのお世辞の一部である(注:
ジェームズ1世はシェイクスピアの劇団であるキングスメン(King's Men)の
庇護者)。トーマス・ブラウン卿 [Sir Thomas Browne, 1605-1682、イギリス
の医者・著述家)は、魔法を否定する者は一種の無神論者である,と主張した。
おおよそニュートンの時代から、害のない女達(注:魔女とされた女性)を想
像上の罪で火刑にすることに終止符が打たれたのは、キリスト教的な自愛(思
いやり)ではなく、科学的な考え方が普及した結果であった。因習道徳におけ
るタブー的要素は、今日では三百年前ほど残忍ではないが、たとえば、避妊
(産児制限)や安楽死への反対においてそうであるように、人間的な感情や実
践の障害となっている部分もある。

The third argument is that, in every tabu morality that has hitherto
 existed, there have been some precepts that were positively harmful,
sometimes in a high degree. Consider, for example, the text:
 “Thou shalt not suffer a witch to live” (Exodus xxii, 18 ). As a 
result of this text, in Germany alone, some 100,000 witches were put
to death during the century from 1450 to 1550 . Belief in witchcraft
 was peculiarly prevalent in Scotland, and was encouraged in England 
by James I. It was to flatter him that “Macbeth” was written, and 
the witches are part of the flattery. Sir Thomas Browne maintained 
that those who deny witchcraft are a sort of atheists. It was not
 Christian charity, but the spread of the scientific outlook, that, 
from about the time of Newton, put an end to the burning of harmless
 women for imaginary crimes. The tabu elements in conventional 
morality are less fierce in our day than they were 300 years ago, but
 they are still in part obstacles to humane feeling and practice, for
 example in the opposition to birth control and euthanasia.
 Source: Bertrand Russell: Human Society in Ethics and Politics, 
1954, chapter 1, n.12
  More info.: https://russell-j.com/cool/47T-0114.htm


■「ラッセルの言葉366_画像版」
 日本語 version : n.2694j-2700j を投稿
 英 語 version : n.2694e-2700e を投稿

 1つだけ再録します n.2694j (March 17, 2024)

 「最も優れた人種・民族だという幻想」

 ニーチェ的な見方、即ち、人類の一部だけが目的とされ、それ以外は単なる
手段に過ぎないという見方、に対するこれまでの議論を要約して、本章を締め
括ることにしよう。第一に、その人類の一部が定義されるや否や、その理論は
その一部に属さない人々に受け入れられなくなる、たとえば、白人でない人々
が、世界は白人だけの利益のために存在すると認めることは期待できない。白
人が覇権を保持している限り、他の皮膚の色の人間は人権を説き、全ての人間
は平等だと言うだろう。しかし、他の有色人種にも成功の見込みがあれば ― 
真珠湾攻撃の後、日本人が自分達にも成功があると信じたように ― 彼らはニ
ーチェ哲学に改宗し、単に、「白色」を「褐色」に置き換えるだけであり、論
理的に重要な変化はないだろう。

I will conclude this chapter by summarizing previous arguments against
 what may be called the Nietzschean view, namely, that only a section
 of mankind are to be considered as ends, while the rest are merely 
means. In the first place, as soon as the section is defined, the 
theory will become inacceptable to all who do not belong to it; it 
cannot be expected, for instance, that men who are not white should 
admit that the world exists for the exclusive benefit of white men. 
So long as white men retain supremacy, men of other colours will 
preach the Rights of Man, and say that all men are equal. But if men
 of some other colour have some prospect of success, as the Japanese
 believed themselves to have after Pearl Harbour, they will become 
converts to the Nietzschean philosophy, merely substituting “yellow”
 for “white” -- a change of no logical importance.
ource: Bertrand Russell: Human Society in Ethics and Politics, 
(1954), chapter 8:Ethical Controversy
More info.:https://russell-j.com/cool/47T-0814.htm

<寸言>
 つまり、日本がアメリカに追従しているのは、あくまでも超大国のアメリカ
に従属しておこぼれをもらったほうが日本の国益になると政府関係者が考えて
いるということ。「Japan as number one」は幻想に終わりましたが、本当に
日本が世界一の経済大国になっていたら、今の米国と同じような態度を対外的
にとっていただろうとのこと。

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(2) ラッセルに関する記述や発言等 
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 今回もお休み

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 編集後記 検定「不合格」ではなく、検定「未了」?
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 平成25年度から使用される中学校用教科書のうち、政治評論家(?)の竹田
恒泰氏が主筆を務めた中学用歴史教科書が、文部科学省教科書検定で「未了」
となっているそうです。竹田恒泰氏は、オリンピック汚職で有名になった竹田
恒和氏(旧皇族、JOC 前会長)の子供で、ネット右翼の保守層には人気のある
人です。旧皇族のなかではめずらしく目立がり屋です。(天皇夫妻の奥床しさ
とは正反対です。)

 主な主張として、ウィキペディアには、「万世一系の維持」「女系天皇」へ
の反対、旧宮家の皇籍復帰」「日本学術会議の解体」などがあげられており、
思想傾向を伺い知ることができます。

 竹田氏が編纂した歴史教科書が教科書検定で「未了」となったのは、結果の
公表前に内容の一部が外部に漏れるなどの不正常な状況が起きたためとのこと
で、「検定手続きのプロセスを精査したうえで合否を判断」することになった
そうです。(ちなみにこの教科書の出版は竹田氏が社長の令和書籍)

 教科書検定は「密室」での作業なので、詳しいことを伺い知ることができま、
せん。しかし、竹田氏が執筆した歴史教科書で不合格になったものが、『中学
歴史ー平成30年度文部科学省検定不合格教科書』がアマゾンでベストセラーと
なっているとのことなので、中身は伺い知ることができます。(ベストセラー
といっても、ネット右翼が持ち上げているだけと思われます。)

 今回の「未了」事件について、今のところ一番詳しく紹介しているのは 
LITERA の次の記事です。(ただし、中心は、『中学歴史ー平成30年度文部科
学省検定不合格教科書』に対する批判です。
 https://lite-ra.com/2019/06/post-4788.html

「竹田恒泰『中学歴史 検定不合格教科書』の間違いが酷い! 大日本帝国憲法
はワイマール憲法を参考…ワイマールは30年後なのに・・・」

 少しだけ抜粋してみます。

・『不合格教科書』が第一章にもってくるのは「神代・原始」。つまり、天地
開闢の日本神話(ファンタジー)からスタートする。

・さらに読んでいくとグッタリするのが、とても教科書とは思えない誤字脱字
や初歩的ミス、誤謬の多さだ。

・たとえば、『不合格教科書』では、1882年に渡欧した伊藤博文について〈ド
イツのワイマール憲法などを参考に憲法について学びました〉と書かれている
のだが、これはウソ。伊藤らによる大日本帝国憲法制定に影響を与えたのはプ
ロイセン憲法だ。というか、ワイマール憲法は当時まだ生まれてすらいない。

 ネット右翼の皆さんはこんな簡単な間違いにも気づかないようです。いや、
「万世一系の男系の天皇制」を維持することが最重要であり、歴史上の事実な
どはどうでもよいことのようです。(松下)


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■編集・発行:(松下彰良/まつした・あきよし)
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