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「(週刊)バートランド・ラッセル(1872.5.18-1970.2.2)に関するメール・マガジン」
  no.0870_2024/02/03 (2006/12/21 創刊/毎週土曜 or 日曜日 発行)

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    ■ 目 次 ■
          
 1.ラッセルの著書及び発言等からの引用
 2.ラッセルに関する記述や発言等
  編集後記


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 1.ラッセルの著書や発言等から
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■「ラッセルの英語」n.2605~2609  を発行しました。
  (1)「ラッセル英単語熟語」は、2605-2609
  (2)「ラッセルの英文」は、n.2605-2, 2607-29. 2609-2
 
 1つずつ再掲します。

■■ バートランド・ラッセルの英語 n.2605  ラッセル英単語熟語

★ advocate [(v)擁護する;主唱する,唱道する || (n) (~の)主唱者;代
弁者;支持者]

* 語源:ラテン語の"advocare"(力を貸す)/"ad"(~の方へ)+"vo"(声を
出す、呼びかける)+”(動詞の語尾)
* advocacy (n): 弁護,支持;唱道;主唱者
* 森一郎『改訂新版 試験にでる英単語』p.157説明: ad = to , voc = call
 → 「人に呼びかける」


1.ラッセルの用例

My father lost his seat in Parliament through advocacy of 
birth-control.
[父は産児制限を唱えたために国会の議席を失った。
 出典:ラッセル『自伝』第1巻第1章「幼少時代」]
     https://russell-j.com/beginner/AB11-010.HTM

It is not only eminent scientists who can derive pleasure through work,
 nor is it only leading statesmen who can derive pleasure through 
advocacy of a cause. The pleasure of work is open to anyone who can 
develop some specialised skill, provided that he can get satisfaction 
from the exercise of his skill without demanding universal applause.
[仕事を通して喜びを引き出せるのは著名な科学者だけではないし,また,主義
(大義)の主張を通して喜びを引き出せるのは指導的な政治家だけではない。
仕事の喜びは,何らかの特技(専門的技術)を伸ばせる人であれば誰にでも可
能である。ただし,大衆の拍手喝采を求めることなく,自分の技術の行使で満足
を得ることができればの話であるが。
 出典:ラッセル『幸福論』第10章「幸福は今でも可能か?」]
     https://russell-j.com/beginner/HA21-040.HTM

The aged radical is therefore in the sad situation that he can only be
 happy so long as he is ineffective; he cannot stop doing any of the 
things that he always has done, including the advocacy of change, but
 not of course including its actual realisation.
[それゆえ,年老いた急進派は,彼が無力であるかぎり幸せになれるという悲し
い身の上にある。即ち,彼は,いつも行ってきたことは,変革の唱道を含め,いか
なることもほとんど一切やめることはできないが,当然のこと変革の実現自体
は含まれていない。
 出典:ラッセル『アメリカン・エッセイ』の中の「老年の脅威」]
     https://russell-j.com/RONEN.HTM

There are societies for political purposes: those which promote Sunday
games and those which combat them; those which advocate free trade and
 those which urge a higher tariff; those which combat war and those
which promote preparedness; the anti-fascists and the British fascisti.
[政治目的をもった団体がいろいろある。たとえば日曜開催の各種競技会を奨
励する団体とそれに反対する団体(訳注:安息日を守る団体),自由貿易を支
持する団体と高率関税を主張する団体,戦争に反対する団体と軍備を促進する
団体,反ファシストの団体と英国ファシストの団体等々。
 出典:ラッセル『アメリカン・エッセイ』の中の「団体について」]
     https://russell-j.com/SOCIETY.HTM


2.参考

Advocates of "traditionalism" emphasize continuity with the past.
[「伝統主義」の賛同者達は、過去とのつながりを重視する。]
 出典:『英単語ターゲット1900 4訂版』p.347]

Plato believed that philosophy can lead us to the highest truth, but 
did not advocate it as suitable for all.
[プラトンは,哲学は人を至高の真実に導いてくれると信じていたが,それが万
人に向いているとは言わなかった。
 出典:『東大英単』p.218]

He advocates a reduction in military spending / advocates reducing 
military spending.


■■  ラッセルの英語(2) n2607-2 ラッセルの英文
 ( Unpopular Essays, 1950 から)

 ラッセル『ヒューマン・ソサエティ-倫理学から政治学へ』
  (Human Society in Ethics and Politics, 1954)

 序論 n.1
 人間の一生(生涯)はいろいろな見方で眺めることが可能であろう。人間を
哺乳類に属する一種として長め、もっ ぱら生物学的な光のもとに考察するこ
とも可能であろう。 この観点から見た場合、人間の成功は圧倒的なものであ
る(現在完了形)。 人間は世界の(地球上の)どのような気候風土でも、水
のあるところならどのような場所でも生きることが可能である。 人間の数は
増加してきており、さらに増加の速度を早めつつある。人間が成功したのは、
人間を他の動物から区別するもの、-(即ち)話し言葉(speech)、火、農業、
道具、そして大規模な協力(など)- のおかげである。

 人間が完全に成功していないのは、協力の問題においてである。人間も、他
の動物と同じく、衝動と情熱とに充ちているが、それらは、人間が出現ししつ
ある間、概して、人間が生き残るのに役立った(ministered to)。 しかし、
人間の知性は、情熱がしばしば自滅的であること、もしある種の情熱に与える
範囲を減らし、それ以外の範囲をもっと増やせば、人間の欲求はより満足させ
られ、幸福がいっそう完全なものとなる、ということを示している。人間はほ
とんどいつの時代にも、またどこにいても、自らを(人間以外の)他の種と張
り合う種とは見てこなかった。人間は、個々の人間ではなく、(集団としての)
人間に関心をち、人間は、味方と敵とにはっきりと二分されてきた。時として
この区分は、勝利者となった側の人々に有益であった。たとえば、白人とアメ
リカン・インディアンとの闘争の場合に有益だったようにである。 しかし、
知性や創意が社会組織をいっそう複雑にするにつれて、協力による利益はたえ
ず拡大し、争いによる利益はたえず減少している。 倫理学と道徳綱領は人間
に不可欠なのは、知性と衝動との間に葛藤があるからである。もし知性だけが
与えられるか、 あるいは衝動だけが与えられるならば、倫理学のための余地
はないであろう。
(訳注:試しに DeepL や Google 翻訳に日本語訳させたところ、「Ethics」
を「倫理」と翻訳。ここは「倫理学」が正解。単純に「倫理」なら「ethic」
と「s」がない。)

The life of man may be viewed in many different ways. He may be viewed
 as one species of mammal and considered in a purely biological light.
From this point of view his success has been overwhelming. He can live
 in all climates and in every part of the world where there is water. 
His numbers have increased and are increasing still faster. He owes 
his success to certain things which distinguish him from other animals:
speech, fire, agriculture, writing, tools, and large-scale co-operation.

It is in the matter of co-operation that he fails of complete success. 
Man, like other animals, is filled with impulses and passions which, on
 the whole, ministered to survival while man was emerging. But his 
intelligence has shown him that passions are often self-defeating, and
 that his desires could be more satisfied, and his happiness more 
complete, if certain of his passions were given less scope and others 
more. Man has not viewed himself at most times and in most places as a
 species competing with other species. He has been interested, not in 
man, but in men; and men have been sharply divided into friends and 
enemies. At times this division has been useful to those who emerged 
victorious: for example, in the conflict between white men and red
 Indians. But as intelligence and invention increase the complexity of
 social organization, there is a continual growth in the benefits of
 co-operation, and a continual diminution of the benefits of 
competition. Ethics and moral codes are necessary to man because of
 the conflict between intelligence and impulse. Given intelligence 
only, or impulse only, there would be no place for ethics.

  Source: Bertrand Russell: Human Society in Ethics and Politics, 
1954, introduction, n.1
  More info.: hhttps://russell-j.com/cool/47T-introduction-01.htm


■「ラッセルの言葉366_画像版」
 日本語 version : n.2645j-2651j を投稿
 英 語 version : n.2645e-2651e を投稿

 1つだけ再録します。n.2651j (Feb. 3, 2024)

 「"正義"の名のもとに制裁する」

 要するに、賞罰は、その社会的影響の望ましさに応じて与えられるべきもの
であり、ある種の想定されるメリットやデメリットの絶対的な基準に基づいて
与えられるべきものではない。原則として、社会的に望ましい行いをする人に
は報酬を与え、有害な行いをする人には罰を与えるのが賢明であることは疑い
ないが、例外は考えられるし、実際に時折起こりがちである。もし「正しい」
行為が欲望の充足を促進するものであるならば、天国と地獄の信仰に基づくよ
うな「正義」の概念は擁護できない。

In short, rewards and punishments should be awarded according to the
 desirability of their social effects, and not according to some 
supposed absolute standard of merit or demerit. No doubt it will, as a
rule, be wise to reward those whose conduct is socially desirable and
 punish those whose conduct is harmful, but exceptions are conceivable
 and are likely actually to occur from time to time. Such a conception
 of “justice” as underlies the belief in heaven and hell is not 
defensible if “right” conduct is that which promotes the satisfaction
 of desire.
Source: Bertrand Russell: Human Society in Ethics and Politics, (1954),
 chapter 7:sin
More info.:https://russell-j.com/cool/47T-0710.htm

<寸言>
 一神教が優勢な国における法制度は、「ある種の想定されるメリットやデメ
リットの絶対的な基準」に基づいているかのように感じられます。特に、敵対
的な国や国民に対する制裁を言う場合に、その考え方や感情(欲望の充足を促
進するための「正しい」行為)が感じられます。
 米国やイスラエルなどにおいて、実際に「天国と地獄の信仰に基づくような
「正義」の概念」を抱いている人がどれくらいいるかわかりませんが、客観的
事実としては信じていなくても、主観的にそのように感じる人は多そうです。

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(2) ラッセルに関する記述や発言等 
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 今回もお休み

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 編集後記 「想定」しなければ「想定外」と言える?ー北陸能登地震の教訓
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 今年の1月1日に能登半島で大規模な地震が起こり、甚大な被害をもたらし
ました。原発を推進している政府や財界には都合が悪いことに、(NHKニュース
だったと記憶していますが)その1カ月ほど前に、経団連の十倉会長は志賀原
発を視察し、「早期の再稼働を期待したい」と述べていました。北陸能登地震
では、珠洲地区が壊滅的な被害を受けましたが、震度は志賀原発がある志賀町
が最大震度7を記録しました。幸い志賀原発は稼働していなかったので大きな
被害は置きませんでした。珠洲にも原発を設置する計画がありましたが、住民
の強い反対で実現していませんでした。建設され、稼働していれば重大な事故
が起こった可能性が十分あります。
 ニュース記事はいずれ削除されるでしょうが、以下のYouTube 動画は圧力が
かからないかぎり、削除されることはないだろうと思われます。
 https://youtu.be/nLXN9AlpjRA

 能登半島から若狭湾にかけての地域は、過去に大きな地震があまり起きてい
ないということから、5つもの原発(敦賀、もんじゅ、美浜、大飯、高浜)が
設置されていることから、「原発銀座」と言われています。しかし、断層が地
面に現れていないだけであり、過去1000年、大きな地震が起きたことがないか
ら安心とは言えません。そのことは、今回の能登地震で多くの国民に認識され
たはずです。

 日本には地震が起こらない場所はなく、過去に大地震の記録がなくても、
いつ能登地震のような大地震が起こるか知れません。しかし、原発を推進した
い人達は、地震学者の調査結果を「免罪符」として、地震の発生が少なく、人
口の少ない地域に積極的に原発を多数設置しようとしてきました(現在54基も
の原発が日本にあります)。万一、大地震が起きても「想定外」として、責任
をとる必要がなく、好都合です。

 断層があっても近くでなければ大丈夫だろうといういうことで川内原発(南
九州)や玄海原発(北九州)や伊方原発(四国)が造られ、海外沿いで津波が
心配でも高い防波堤を設ければ大丈夫だろうと高浜原発(中部)などが造られ
ています。特に浜岡原発には5基の原発があり、もし大規模な事故がおこれば
新幹線と東名高速道路が分断され(東日本と西日本の交通が遮断され)、未曾
有(みぞう/ 麻生元首相によれば「みぞゆう」)の被害がもたらされることが
予想されます。南海トラフ地震が起こればそのような事態も十分予想されます
が、それは「想定外の事態」だから「想定しないことにしよう」、ということ
のようです。

 大阪万博は準備が遅れており、建設業界の責任のある立場の人々が、人出不
足や建設資材の高騰、能登地震の復興の必要性などの関係で、来年の4月開催
までに準備を整えることは不可能だと言っています。しかし、大阪維新の会だ
けでなく、政府も財界も両方ともしっかりやると「精神論」しか言いません。
北陸も関西も同じ地区にあると言え、お金は無理やり投下できたとしても、人
の手当はそういうわけにはいかず、いずれは責任を押しつけ合う事態になるだ
ろうと予想されます。誰の責任も問わないのも「日本の美徳」ではないですが
・・・。 (松下)

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■編集・発行:(松下彰良/まつした・あきよし)
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