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「(週刊)バートランド・ラッセル(1872.5.18-1970.2.2)に関するメール・マガジン」
no.0719_2021/01/30 (2006/12/21 創刊/毎週土曜 or 日曜日 発行)
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■ 目 次 ■
1.ラッセルの著書及び発言等からの引用
2.ラッセルに関する記述や発言等
編集後記
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1.ラッセルの著書や発言等から
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■「(ほぼ日刊)ラッセルの英語」
n.1987〜1991 を発行しました。2つ再掲します。
(1) ラッセル英単語・熟語 find, realize, recognize, notice の使い分け
https://russell-j.com/beginner/reitan-edokushu_tankyu03.htm
★ find, realize (realise), recognize (recognise), notice
の違い/使い分け
< 今井むつみ『英語独習法』>
p.214: 次に find と realize と recognize をどう使い分けるか考えてみよ
う。この場合も、目的語や、重ねて使われる類義語や修飾語に注目するとよい
であろう。
acknowledge, reward という動詞や independence という名詞と一緒によく
使われるものはどれだろうか? fully や suddenly などの副詞と一緒によく
使われるのはどれだろうか? search や try などと並べて使われることがよ
くあるのはどれだろうか?
【 find は「(偶然または努力して)気づく」「(偶然または努力して)見つ
ける」
realize は「(頭で考えて認識するという意味での)気づく」=「理解する」
「認識する」
recognize は「(知っている情報を元に)気づく」「認知する」「認める」
notice は、五感を通じて、見たり・聞いたり・感じたりして「(ハッと)
気づく」】
<ラッセルの用例>
After two or three years of introspection, however, I suddenly
realised that, as it is the only method of obtaining a great deal of
important knowledge, it ought not to be condemned as morbid.
[けれども,内省を2,3年行った後,突然,内省は非常に多くの重要な知識を獲
得する唯一の方法であるので,病的だとして非難されるべきものではないとい
うことを悟った(理解した)。]
出典:ラッセル『自伝』第1巻 第2章青年期
https://russell-j.com/beginner/AB12-040.HTM
When we are liberated by this negative emotion, we are able to realize
more fully, through music or poetry, through history or science,
through beauty or through pain, that the really valuable things in
human life are individual, not such things as happen on a battlefield
or in the clash of politics or in the regimented march of masses of
men towards an externally imposed goal.
[我々は,そうした消極的な(否定的な)情緒から自由になると(解放される
と),音楽や詩を通して,歴史や科学を通して,美あるいは苦痛を通して,人
間にとって真に価値があるものは(社会的なものではなく)個人的なものであ
って、戦場や政治の衝突や外部から押し付けられた目標に向かう人間集団の連
隊行進において起こるようなものではない,ということをより十全に理解する
ことができるのである。]
出典:ラッセル『権力』第18章「権力を手懐けること」
https://russell-j.com/beginner/POWER18_350.HTM
If a man is a genius whom the age will not recognise, he is quite
right to persist in his course in spite of lack of recognition. If, on
the other hand, he is an untalented person puffed up with vanity, he
will do well not to persist.
[ある人が'時代によって認められない天才'であるとするならば,認められなく
てもあくまでも我が道を歩き続けることはまったく正しいことである。しかし
,その反対に,もしもその人が,'虚栄心で思い上がっている'才能がない人間で
あれば,我が道に固執しない方がよいだろう。]
出典:ラッセル『幸福論』第8章「被害妄想狂」
https://russell-j.com/beginner/HA18-060.HTM
So far as the acquisition of book-learning is concerned, it is
recognised that children can acquire it better from those who have it
than from a mother who does not have it.
[書物からの知識(机上の学問)の獲得に関するかぎりは、それを身につけて
いない母親よりも、身につけている人々から習得するほうがうまくいくことが
認められている。]
出典:ラッセル『幸福論』第8章「家族」
https://russell-j.com/beginner/HA24-100.HTM
I continued my search, as I have done since, to find fresh approaches
through which to try to sway public opinion, including governmental
opinion.
[私は、それ以後今日までやってきたように、政府の見解とともに、一般民衆
の見解を左右するための何か新鮮な方法を発見しようと探求を続けた。]
出典:ラッセル『自伝』第3巻第3章「トラファルガー広場」
https://russell-j.com/beginner/AB33-060.HTM
The consequence is that adults have slipshod habits of mind and cease
to notice distortions of fact which have a sinister motive.
[その結果,大人たちは正確さを欠いた心的習性を身につけ,悪意のある動機に
よる事実の歪曲に気付かなくなる。]
出典:ラッセル『アメリカン・エッセイ集』の中の「知的水準の低下」
https://russell-j.com/DECAY-IS.HTM
(2) ラッセル英単語・熟語 propose, suggest, recommend, advise の使い分け
https://russell-j.com/beginner/reitan-edokushu_tankyu04.htm
★ propose, suggest, recommend, advise の違い/使い分け
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< 今井むつみ『英語独習法』>
p.217: ・・・。その延長線上に、日本語で「提案する」に当たる propose,
suggest, recommend, advise などの動詞がある。これらの動詞はとりわけ顧
客に対して提案するときに大事だ。
・・・。正解は一つではない。同じ内容を言いたい時に、いくつもの表現が
可能だ。しかし、その中で最善のものを真剣に考えるのがプロの書き手であり
、それに少しでも近づくのにコーパス(注:自然言語処理の研究に用いるため
、自然言語の文章を構造化し大規模に集積したもの)が役に立つ。
===================================================================
propose: 積極的、能動的な提案
suggest: 案を提示あるいは示唆し、選択は委ねる、控えめな提案
advise: 豊富な経験や知識を持つ人からの「提案」
recommend: 経験や知識に基づいた推奨
ラッセルの用例
Judge Ben B. Lindsey, who was for many years in charge of the juvenile
court at Denver, and in that position had unrivalled opportunities for
ascertaining the facts, proposed a new institution which he calls
"companionate marriage".
[ベン・B・リンゼー判事(裁判官)は,− 彼は,長年,(米国)デンバーの少
年裁判所の裁判長をつとめ,その地位において,(諸)事実を確かめるにあた
って比肩なき機会に恵まれていた− 「友愛結婚」と彼が命名した新しい制度
を提案した。]
出典:ラッセル『結婚論』第12章「試験結婚」
https://russell-j.com/beginner/MM12-050.HTM
These are matters which lie within the power of the individual, and I
propose to suggest the changes by which his happiness, given average
good fortune, may be achieved.
* propose to do : (・・・することを)企てる、(・・・する)つもりであ
る
[私は人並みの幸運さえあれば、幸福が達成できるような(生活の)改変を提
案しようと思う。]
出典:ラッセル『幸福論』第1章「不幸の原因」
https://russell-j.com/beginner/HA11-020.HTM
I do not recommend this course of action to everyone, but only to
those who suffer from the disease which Mr. Krutch diagnoses.
[私は,すべての人にこの一連の行動をお勧めするのではなく,クルーチ氏の診
断する病気にかかっている人たちに対してのみお勧めする。]
出典:ラッセル『幸福論』第2章「バイロン風の不幸」
https://russell-j.com/beginner/HA12-080.HTM
I remember once being advised by a doctor to abandon the practice of
smoking,
[私はかつて医者に喫煙の習慣をやめるように助言されたことを覚えている。]
出典:ラッセル『結婚論』第5章「キリスト教倫理」
https://russell-j.com/beginner/AB22-150.HTM
The man who proposes any change in sexual morality is especially
liable to be misinterpreted in this way, and I am conscious myself of
having said things which some readers may have misinterpreted.
[性道徳について何らかの変革を提案する人は,特に,このようにして誤解さ
れがちである。そういう私自身も,一部の読者が誤解したかもしれないような
ことを言ったと自覚している。]
出典:ラッセル『結婚論』第21章「家族」
https://russell-j.com/beginner/MM21-060.HTM
Philosophy, though unable to tell us with certainty what is the true
answer to the doubts which it raises, is able to suggest many
possibilities which enlarge our thoughts and free them from the
tyranny of custom.
[哲学は,それが提出する疑問に対して真の答えが何であるか,確実性をもって
教えることはできないが,我々の思考を拡大し,習慣の専制から思考を解放する
多くの可能性を示唆できる。]
出典:ラッセル『哲学入門(哲学の諸問題』第15章「哲学の価値」
https://russell-j.com/R601.HTM
I gave her a little sketch of French history, and a few days later she
told me that her secretary desired a handbook of French history, and
asked me to recommend one.
[私は,ごくかいつまんでフランスの歴史を彼女に説明したが,それから2,3日
後に,彼女は,自分の秘書がフランス史のハンドブックを欲しがっていると私に
言い,私に1冊推薦してほしいと依頼してきた。]
出典:ラッセル『自伝』第1巻第5章「初婚」
https://russell-j.com/beginner/AB15-140.HTM
He will be well advised from the point of view of his own happiness if
he chooses it in preference to work much more highly paid but not
seeming to him worth doing on its own account.
[もし彼がずっと高給であるがそれ自体としてやりがいがあるとは一見して思
えないような仕事の方を優先して選ぶとしたら,彼自身の幸福の観点から,(お
金よりもやりがいを選んだほうがよいだろうと)忠告されるのがよいだろう,
と私は考えている。]
出典:ラッセル『幸福論』第14章「仕事」
https://russell-j.com/beginner/HA25-060.HTM
■「ラッセルの言葉(Word Press 版)v.2, n.1730〜1734
1) n.1730:ラッセル『宗教と科学』第6章 n.5
https://russell-j.com/wp/?p=6063
2) n.1731:ラッセル『宗教と科学』第6章 n.6
https://russell-j.com/wp/?p=
3) n.1732:ラッセル『宗教と科学』第6章 n.7
https://russell-j.com/wp/?p=6070
4) n.1733:ラッセル『宗教と科学』第6章 n.8
https://russell-j.com/wp/?p=6074
4) n.1734:ラッセル『宗教と科学』第6章 n.9
■「ラッセルの言葉366_画像版」
日本語 version : n.1546j-1552j を投稿
英 語 version : n.1546e-1552e を投稿
一つだけ再録します。
n.1552j ( Jan. 30, 2021)
https://russell-j.com/smart_r366/r366g_j1552.html
「アメリカの諸大学での講義」
私はシカゴ大学で規模の大きなゼミを持ち,オックスフォード大学の時と同
じテーマ,即ち「言語と事実」について講義を続けた。・・・。それはとても
楽しいゼミであった。そのゼミにはカルナップとチャールズ・モリスがいつも
出席しており,また三人の飛びぬけて優秀な学生,ダルキーとカプランとコピロ
ウィッシュが出席していた。われわれはいつも行きつ戻りつしながら充実した
議論を続けた。そうして,そういうことは哲学上の議論においてはごくまれな
ことであるが,お互いに満足のいくまで問題点を整理することに成功した。
このゼミを別にすれば,シカゴ時代は不愉快なものであった。町は不潔であり,
気候はひどかった。
In Chicago I had a large seminar, where I continued to lecture on the
same subject as at Oxford, namely, 'Words and Facts.... It was an
extraordinarily delightful seminar. Carnap and Charles Morris used to
come to it, and I had three pupils of quite outstanding ability
Dalkey, Kaplan, and Copilowish. We used to have close arguments back
and forth, and succeeded in genuinely clarifying points to our mutual
satisfaction, which is rare in philosophical argument. Apart from
this seminar, the time in Chicago was disagreeable. The town is
beastly and the weather was vile.
Source: The Autobiography of Bertrand Russell, v.2
More info.: https://russell-j.com/beginner/AB26-010.HTM
<寸言>
オックスフォード大学(1938年)、シカゴ大学(1938/1939年)、カリフォ
ルニア大学ロサンゼルス校(UCLA, 1939/1940年)及びハーバード大学
(Williams James Lectures, 1940)で講義した内容は、1940年12月に An
Inquirery into Meaning ande Truth という書名で英米で出版されました。日
本でも文化評論出版から1973年1月に、毛利可信(訳)『意味と真偽性−言語哲
学的研究』として出版されています。
少し専門的な内容(哲学科の一般学生が理解できる内容)なので、ラッセル
の一般向けの著作のようにスラスラと読めるものではないですが、引用文にあ
るように、多めの人数のゼミ生に対しわかりやすく述べられたものであり、多
くの議論がなされて整理された結果なので、難解と思われるところはほとんど
ないと思われます。
ただし、「訳者のことば」にあるように、「認識論、思考心理学、数理論理
学等をふまえた、意味論・知識論であり、包括的に言えばひとつの言語哲学」
ですので、訳書には付録として、「ラッセルの言語観」と「記号論理学解説」
がつけられています。
大学関係者なら、主要大学の図書館で原著及び訳書を所蔵していますので、
興味のある方は一読してみてください。
それから、シカゴの空気はよくなくて街がきたないというのは、ラッセルが
シカゴ大学に行った1930年代末(つまり第二次世界大戦前)の状況と思われま
すが、気候についてはあまり好いとは言えなさそうです。シカゴ在住のある女
性の面白い紹介記事「シカゴ在住の私がニューヨークを訪れた感想」がありま
したので、ちょっとだけ引用しておきます。
http://kaigaigo.com/usa-15052/
・私は日本からシカゴに来たとき、シカゴの地下鉄って汚いなあ…と思いまし
たが、ニューヨークから戻ってきたらまるで天国のように見えました。
・街の美しさという点では、シカゴの方が(New York よりも)断然勝ってい
ると思いました。
・旅を終えて私は率直にこう思いました。「住むならシカゴが良い。ニューヨ
ークはたまに遊びに行くくらいで十分」と。
これを読むとシカゴは環境がだいぶ改善されているように思われます。
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(2) ラッセルに関する記述や発言等
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今回もお休みです。
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編集後記 ナターシャ・グジー − 素晴らしい歌声のバンドゥーラ奏者
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コロナ・ウィルスや政治家の不祥事ばかりに言及していては気分が晴れませ
ん。そこで、心洗われる歌声の持ち主のナターシャ・グジーをご紹介しておき
ます。
知っている人も多いかもしれないですが、私はナターシャ・グジー(1980年
生)のことを一昨日初めて YouTube で知りました。その澄んだ歌声とウクライ
ナの民族楽器バンドゥーラの音色に魅了され、即、ファンになりました。
ナターシャはチェルノブイリ原発事故で被爆し、避難生活で旧ソ連各地を転
々として、ウィキペディアによると、「原発事故で被災した少年少女を中心に
結成された民族音楽団 チェルボナ・カリーナ のメンバーとして、1996年、
1998年に来日し、全国で救援コンサートを行った」そうです。
2000年から日本語を学びながら日本各地で活動を始め、「2005年7月のウク
ライナ大統領ヴィクトル・ユシチェンコ来日の際には、首相官邸での小泉純一
郎首相主催の夕食会に招かれ、演奏を披露」したとのことです。
当時話題になったのでしょうが、私はまったく知りませんでした。
YouTube には20本くらい music video がアップロードされており、どれも
素晴らしいですが、「千と千尋」の主題歌「いつも何度でも」だけ URLを転
載しておきます。(YouTube で「ナターシャ・グジー」で検索すればすべて視聴
できます。)
https://youtu.be/6JiOQ1UBkzU (松下彰良)
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■編集・発行:(松下彰良/まつした・あきよし)
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