★ バックナンバー索引 ★
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(週刊)バートランド・ラッセル(1872.5.18-1970.2.2)に関するメール・マガジン
no.0678_2020/03/28 (2006/12/21 創刊/毎週土曜 or 日曜日 発行)
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■ 目 次 ■
(1)ラッセルの著書及び発言等からの引用
(2)ラッセルに関する記述や発言等
編集後記
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(1) ラッセルの著書や発言等から
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■「(ほぼ日刊)ラッセルの言葉366」
n.1827〜n.1831を発行しました。
2つ転載します。
(1) 『私の哲学の発展』第11章 知識の理論 n.6
https://russell-j.com/beginner/BR_MPD_11-060.HTM
「ラッセルの言葉366」n.1828 (2020年03月24日 火曜日)
五番目の先入見:1918年に私が気づいたことのひとつは、それまで「意味」
の問題に、また一般的に言って、言語の問題に、自分が十分な注意を払ってい
なかった、ということであった。このとき(then 1918年に)初めて語ともの
(things)との関係に関する多くの問題に気づいた。まず単語の分類の問題が
ある。(即ち)固有名詞、形容詞、関係語、接続詞、それから「全て(all)」
とか「ある(some)」(とか言った語である)。次に、文の意味とは何か、文が
真と偽という二元性(duality)をもつにいたるのはいかにしてであるか、とい
う問題がある。算術における形式主義者が存在し、彼らは、数が物を数えるた
めに用いらなければならないとうことを熟考(without reflecting)せずに、た
だ数と数とを加える(doing sums 合計を出す)ための規則を立てるだけで満
足しているが(content to lay down)、ちょうどそれと同じく(just as 〜 so)
、言語一般というより広い領域にも、形式主義者が存在しており、真理とはあ
る一定の規則に従うことであって事実に対応すること(correspond with)で
はないと考えている、ということに私は気づいた(見出した)。多くの哲学者
が真理の「対応説」('correspondence theory' of truth)を批判するけれど
も、私には常に、論理学と数学において以外は、対応説以外のいかなる理論も
正しいといえる見込みは全くない、と思われた。
私はまた、人間の知性と動物の知性との連続性を保持したいという私の欲求
のひとつの帰結として、言語の重要性は、非常に大きいとしても、これまで過
大視されて来ている、と(も)考えた。信念や知識は言語以前の形態をもって
いるのであり、このことがよく理解されていなければ信念も知識も正しく分析
されえない(分析することはできない)、と私には思われた。
言語の問題に最初に関心を持ち始めた時、私はその困難さと複推さとにまっ
たく理解していなかった。当初はそれらの問題(の本質)が何であるか十分知
るこもなく、ただそれらは重要であるという感覚(感じ)のみを持っていた。
そして(現在)この領域の完全な知識を持つにいたったなどと言うつもりはな
いが、いずれにせよ(ともかくも)私の考えは、次第に明瞭かつ明確になり
(more articulated, more definite)、そこに含まれている問題を一層よく
意識するにいたっている。
Chapter 11 The Theory of Knowledge, n.6
Fifth. One of the things that I realized in 1918 was that I had not
paid enough attention to 'meaning' and to linguistic problems
generally. It was then that I began to be aware of the many problems
concerned with the relation between words and things. There is first
the classification of single words: proper names, adjectives, relation
words, conjunctions and such words as ‘all' and ‘some'. Then there
is the question of the significance of sentences and how it comes
about that they have the duality of truth and falsehood. I found that,
just as there are formalists in arithmetic, who are content to lay
down rules for doing sums without reflecting that numbers have to be
used in counting, so there are formalists in the wider field of
language in general who think that truth is a matter of following
certain rules and not of correspondence with fact. Many philosophers
speak critically of the 'correspondence theory' of truth, but it
always seemed to me that, except in logic and mathematics, no other
theory had any chance of being right.
I thought, also, as a consequence of my desire to preserve continuity
with animal intelligence, that the importance of language, great as
it is, has been over-emphasized. It seemed to me that belief and
knowledge have pre-verbal forms, and that they cannot be rightly
analysed if this is not realized.
When I first became interested in linguistic problems, I did not at
all apprehend their difficulty and complexity. I had only the feeling
that they were important, without at first knowing quite what they
were. I do not pretend to have arrived at any completeness of
knowledge in this sphere, but at any rate my thinking has gradually
become more articulated, more definite, and more conscious of the
problems involved.
(2)「ラッセルの意味論的パラドクス」(出典:『ラッセル思想辞典』)
【藤川吉美 氏(1985年執筆当時は成蹊大学講師、後に九州女子大学学長)に
よる解説です。以下の解説は、ラッセルの著書から引用しているわけではな
く、藤川氏による紹介(解説)ですので、ラッセルの著書の原文を添付して
いません。
藤川氏があげている参考文献: Bertrand Russell's Introduction to
Mathematical Philosophy, 1919】
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代表的な「意味論的パラドックス」は「エピメニデスのパラドックス」ある
いは「嘘つきのパラドックス」と呼ばれるものである。それは次のように示さ
れる。まず、クレタ島人であるエピメニデスが「すべてのクレタ島人は嘘つき
である」と語った。もしこの言明が真であるならば、その言明を発したエピメ
ニデス自身クレタ島人であるが、彼は嘘をついてはいないことになり、この言
明は偽であらねばならない。一方、もしこの言明が偽であるならば、彼はクレ
タ島人として嘘をついていることになり、この言明は真とならなければならな
い。これは明らかに矛盾である。
次に、「リチャードのパラドックス」(一九〇五)は、「一〇〇字以内で定
義されない最小の自然数」が、まさにこの言明によって一〇〇字以内(注:19
字)で定義されている、という意味でのパラドックスである。「ペリーのパラ
ドックス」(一九〇六)および「グリーリングのパラドックス」(一九〇八)
もこれに類似した「意味論的パラドックス」である。
これらのパラドックスはすべて言語のレベルを「対象言語」と「メタ言語」
に区別することによって解決される。確かに、「わたくしが述べていることは
偽である」という言明は、それが真ならば偽であり、それが偽であるならば真
であるということになり、意味論的なパラドックスにおちいるが、言語のレベ
ルを混同しないで、「対象言語」(基準言語)と「メタ言語」(基準言語につ
いて語る言語)とに区別すれば、このパラドックスは容易に回避される類のも
のである。
しかし、ラッセルの「"単純"階型理論」(simple theory of types)では、
こうした意味論的パラドックスは回避され得ないことをラムジー(E.P.
Ramsey, 1903-1930)は指摘した。(ラムジーの項参照)(藤川)
■「(ほぼ日刊)ラッセルの英語」
n.1783〜1782を発行しました。ひとつだけ再掲します。
n.1779 (2020年03月16日)
最所フミ(編著)『日英語表現辞典』は前回で終了し、R英単シリーズに復帰
しました。
★ disintegrate (v)【(vi) 分解する,崩壊する; (vt) 分解させる、崩壊させる】
* disintegrate into ... :崩れて〜になる
* disintegration (n):分解,崩壊
1.ラッセルの用例
<用例1>
Social cohesion demands a creed, or a code of behaviour, or a
prevailing sentiment, or, best, some combination of all three ;
without something of the kind, a community disintegrates, and becomes
subject to a tyrant or a foreign conqueror.
[社会的結合(社会の団結)には信条あるいは,行動規範、あるいは(多くの人
々に)広く行き渡る感情か,あるいは −これが最善であるが− 以上の3つ全
てが結びついたものが必要である。この種のものがなければ,社会は分裂し,
暴君(圧制者)かあるいは外国の征服者に従属することになる。]
出典:ラッセル『権力』第10章「権力の源泉としての信条」
https://russell-j.com/beginner/POWER10_110.HTM
<用例2>
Radioactive atoms disintegrate and do not put themselves together
again. Speaking generally, processes in the physical world all have
a certain direction which makes a distinction between cause and effect
that was absent in classical dynamics.
[放射性原子は崩壊し、再結合することはない。一般的に言って、物理的世界
における諸過程(プロセス)は全て,原因と結果とを区別するような(一つ)方
向(性)をもっており、この原因と結果との区別は古典物理学においては存在し
ていなかったものである。]
出典:ラッセル『私の哲学の発展』第2章「私の現在の世界観」
https://russell-j.com/beginner/BR_MPD_02-110.HTM
<用例3>
All unhappiness depends upon some kind of disintegration or lack of
integration; there is disintegration within the self through lack of
coordination between the conscious and the unconscious mind.
[全ての不幸は,ある種の分裂あるいは統合の欠如にその原因がある。意識的な
精神と無意識的な精神とをうまく調整できないと,自我の中に分裂が生じる。]
出典:ラッセル『幸福論』第17章「幸福な人間」
https://russell-j.com/beginner/HA28-030.HTM
2.参考例
<参考例1>
The disintegration of rock occurs through physical, chemical, and
biological processes.
[岩の風化は,物理的,化学的,そして生物学的作用によって起こる。]
出典:『新版完全征服データベース5500 合格 英単語・熟語』p.149
<参考例2>
The space shuttle disintegratged on its return to Earth.
[スペースシャトルは地球への帰路でばらばらに分解した。]
出典:『究極の英単語−超上級の3000語』p.38
<参考例3>
The project disintegrated owing to lack of financial backing.
出典:Longman Dictionary of Contemporary English, new ed.
<参考例4>
During October 1918 the Austro-Hungarian Empire began to disintegrate.
出典:Collins COBUILD English Dictionary for Advanced Learners, new
ed
★「ラッセルの言葉(Word Press 版)v.2, n.1528〜1532
1)n.1528:R『権力−その歴史と心理』第14章 競争,N.15
80%
2)n.1529: R『権力−その歴史と心理』第14章 競争,N.16
https://russell-j.com/wp/?p=5332
3)n.1530: R『権力−その歴史と心理』第14章 競争,N.17
https://russell-j.com/wp/?p=5335
4)n.1531: R『権力−その歴史と心理』第14章 競争,N.18
https://russell-j.com/wp/?p=5338
5)n.1532: R『権力−その歴史と心理』第15章 権力と道徳律,N.1
https://russell-j.com/wp/?p=5341
★「ラッセルの言葉_画像版」
日本語 version : n.1238j-1244j を投稿
英 語 version : n.1238e-1244e を投稿
一つだけ再録します。
https://russell-j.com/smart_r366/r366g_j1243.html
「歴史上のキーパーソンの重要性」
服従を拒否する勇気をもっているが,命令したいと望む傲慢さを持っていな
い者がいる。そういう人は,そんなに簡単に社会機構に自分を合わせようとせ
ずに,どうにかして多少とも孤独な自由を享受できる隠れ家を探し求める。
時々,こういった気性の人が大いに歴史的な重要性を持ってきた。
There are men who have the courage to refuse submission without having
the imperiousness that causes the wish to command. Such men do not fit
readily into the social structure and in one way or another they seek
a refuge where they can enjoy a more or less solitary freedom.
At times, men with this temperament have been of great historical
importance.
Source: Power, a new social analysis, 1938, by Bertrand Russell
More info.: https://russell-j.com/beginner/POWER02_160.HTM
<寸言>
隠れ家にかくれるだけで個人的な「趣味の享受」にあけくれる人はニートと
呼ばれる。それはあまりよい状態ではないが、お上の目は逃れたいが、自分な
りに創造的な行為をしたいと努力する人は、間接的かも知れないが、社会に貢
献する。
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(2) ラッセルに関する記述や発言等
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★「ラッセル落ち穂拾い−初級篇」
1)「講壇/新型コロナが問う「自由とは何か」(早稲田大学政治経済学術院副学
術院長・深川由起子)
『日刊工業新聞』2019年3月23日(月)電子版記事から。
https://russell-j.com/beginner/ochibo-2020.htm#r2020-01
「高校生の頃、「格調高い英語とはこういうもの。1週間で丸暗記せよ」と渡
されたのが20世紀・英国の強烈な知性、バートランド・ラッセル卿の論文
「自由とは何か」だった。新型コロナウイルスの急速な世界拡散は再びこの冷
戦当時と同じ、「自由とは何か」を問うている。・・・」
(松下注:それほど長くないエッセイ(数十ページ)ですが、丸暗記せよとい
った高校教師はそうとうラッセルに入れあげていたように思われます。今こん
なことを強制する古いタイプの教師はいないでしょうが・・・?)」
「・・・米国は欧州に対する国境を閉じ、欧州に大規模支援を申し出たのは中
国だった。欧州の危機は中国にとって西欧型自由主義の脆弱(ぜいじゃく)さ
を批判し、同時に武漢を完全封鎖し、野戦病院方式で危機管理を進めた自国の
対応力を内外に喧伝(けんでん)する機会でもある。・・・。株式市場が示す
欧米の狼狽(ろうばい)は事態をアジアのひとごとと見ていたことによるだろ
う。だが、危機とはいえ、個人の自由や言論の自由、法治などが浸透した民主
主義社会の対応は中国のようにはいかないし、また、いかせたくもない、とい
う逡巡(しゅんじゅん)が結局、初期対応を遅らせた。実際のところ、中国が
そもそも感染症のリスクを警告した医師を処分するようなことをせず、適切に
対応していれば、ここまで世界を苦しめることにはならなかったはずなのだ。
中国とは違う民主主義社会での防疫を喧伝していた韓国政府も、外信記者に感
染者の立ち寄り先公開とプライバシー保護の関係を問われると下を向くしかな
かった。・・・
「しかしながらますます重みを増すのは「自由とは何か」という問いである。
中核となる通信ではファーウェイ問題が象徴するように中国が最先端技術を掌
握し、デジタル通貨の実験を繰り返し、遺伝子操作による子ども誕生のデータ
を握る。だが、それらはあらゆるものの上に共産党が存在する異形の体制下に
あるからだ。先進国が個人の持つ権利や個人情報の保護、異なる意見の調整を
維持しながら、異形の国家と競争し続けるのは容易ではあるまい。救いは中国
にとってさえも、異形さが負担になり始めていることなのかもしれない。」
「ラッセル卿の論文は次のように終わる。「西欧を代表するものは基本的には
政府が個人のために存在するのであって、個人が政府のために存在するのでは
ない、という信念だ。危機に直面しているのはこの原理であり、人類の将来に
とってこの原理より重要なものが他にあるとは思えない」。戦後、この価値観
を大切にしてきた日本はどこに着地点を見いだすのだろうか。」
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編集後記 年齢とともに作業量(労働料)を減らす
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年齢を重ねるとともに日々の作業量(労働量)を減らさないといけないと
ずっと思ってきました。しかし、何を減らしたらよいのか、なかなかよい考
えが浮かびませんでした。
現在、ラッセル関係のメルマガを3つ(「(ほぼ日刊)ラッセルの言葉」
「(ほぼ日刊)ラッセルの英語」「(週刊)ラッセルのポータルサイト公式メル
マガ」)を発行していますので、メルマガを何とかするのが一番よいとすぐに
思いつきました。しかし、この3つは性格が異なるので、どれかを1つやめる
わけにはいかないと、思案してきました。
そんな状況のなか、一つ名案が浮かびました。即ち、「ラッセルの言葉」の
ほうも原則として、ラッセル著書の翻訳だけでなく、ラッセルの英文も収録し
ているのだから、「ラッセルの英語」の方に合体させればよいのではないかと
思いつきました。
ということで、4月1日から「ラッセルの言葉」を休刊(実質上の廃刊)と
し、「ラッセルの英語」を次のように発行することに決めました。
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月 「ラッセルの英語1」+「ラッセルの英語2」(=旧ラッセルの言葉)
* 月曜日のみ2つ発行
火 「ラッセルの英語1」
水 「ラッセルの英語2」(=旧ラッセルの言葉)
木 「ラッセルの英語1」
金 「ラッセルの英語2」(=旧ラッセルの言葉)
土 「(週刊)ラッセルのポータルサイト用公式メルマガ」(月〜金までの
abridged edition)
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そういうわけで、「ラッセルの言葉」を購読(無料)しているが「ラッセ
ルの英語」(無料)を購読(無料)してない方は、この機会に「ラッセルの
英語」を次のページで購読手続きをしてくださるようにお願いします。
https://www.mag2.com/m/0001623960.html
このように作業量を減らすことによって「質を高めていこう!」と言いな
がら、少しなまけるようにするだけという結果になるかも知れませんが、
年を取れば健康が最重要ということで・・・。(松下彰良)
★「ラッセル版の南部せんべい」の画像」
https://russell-j.com/smart_r366/images/br_nanbusenbei_inoue.png
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■編集・発行:(松下彰良/まつした・あきよし)
■ご意見・ご感想・お問合せはお気軽に : matusitaster@gmail.com
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