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 (週刊)バートランド・ラッセル(1872.5.18-1970.2.2)に関するメール・マガジン
  no.0646_2019/08/03 (2006/12/21 創刊/毎週土曜 or 日曜日 発行)

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     ■ 目 次 ■
          
(1)ラッセルの著書及び発言等からの引用
(2)ラッセルに関する記述や発言等
 編集後記

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(1) ラッセルの著書や発言等から
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■「(ほぼ日刊)ラッセルの言葉366」
      n.1675〜n.1679 を発行しました。

 ・月曜日〜木曜日は『私の哲学の発展』 を
 ・金曜日は 『アメリカン・エッセイ集』+α をお届けしています。
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(1) 『私の哲学の発展』第6章 「数学における論理的手法」 n,1

 大学を(種々の)部門に分けること(faculties 学部や学科)は必要だと思う
が、それによっていくつかの非常に不幸な結果を生んできた。(たとえば)論
理学は哲学の一部門と考えられており,アリストテレスによって取り扱われた
ために、ギリシャ語に堪能な者によってのみ取り扱われる学科(主題)だと考
えられてきた。数学は、その結果として、論理学を知らない者によってのみ扱
われてきた。アリストテレスやユークリッドの時代から今世紀に至るまで、論
理学と数学とのこの分離は、ひどい結果を引き起こしてきた。数学の哲学にと
って論理学の改革が重要であることに私が気づいたのは、1900年、パリで開か
れた国際哲学会においてであった。私がそのことに気づいたのは、トリノ大学
のペアノ(Turin 英 = Torino 伊)とそこに集まった他の哲学者たちとの議論を
聞いたことによってであった。私はそれ以前には、ペアノの著書を知らなかっ
た。けれどもあらゆる議論において、ペアノが他の誰よりも正確さと論理的厳
格さとを示したという事実から、私は強い印象を受けた。私はベアノのところ
に行って,こう言った、「私はあなたの書物をすべて読みたい。複本(copies)
お持ちでしょうか?」 からは持っていた。そうして、私はすぐにそれらの本
を全て読んだ。数学の原理についての私自身の見解を推し進める力を与えたも
のはこれらのペアノの著書であった。
、                 	
Chapter 6: Logical Technique in Mathematics, n.1

The division of universities into faculties is, I suppose, necessary, 
but it has had some very unfortunate consequences. Logic, being 
considered to be a branch of philosophy and having been treated by 
Aristotle, has been considered to be a subject only to be treated by
 those who are proficient in Greek. Mathematics, as a consequence, has
 only been treated by those who knew no logic. From the time of 
Aristotle and Euclid to the present century, this divorce has been 
disastrous. It was at the International Congress of Philosophy in Paris
 in the year 1900 that I became aware of the importance of logical 
reform for the philosophy of mathematics. It was through hearing 
discussions between Peano of Turin and the other assembled philosophers
 that I became aware of this. I had not previously known his work, but
 I was impressed by the fact that, in every discussion, he showed more
 precision and more logical rigour than was shown by anybody else. 
I went to him and said, 'I wish to read all your works. Have you got 
copies with you?' He had, and I immediately read them all. It was they
 that gave the impetus to my own views on the principles of 
mathematics. 
 Source: My Philosophical Development, chap. 6:1959.
 More info.:https://russell-j.com/beginner/BR_MPD_06-010.HTM


(2) 「科学者は科学的か?」(『アメリカン・エッセイ』から)

   https://russell-j.com/KAGAKSHA.HTM

  本物の科学者に対しては私は最高度の尊敬を抱いている。本物の科学者は,
現代世界において,真に建設的であると同時に,心底から革命的な一つの力であ
る。科学者は,一般の人たちと同様に持っている偏見に関係ない専門的な問題
を扱っている場合は,他の誰よりもずっと正しい判断を下す傾向にある。だが,
残念ながら,個人的に強い感情を抱いている問題に取り組む場合に,公平無私な
立場を維持できる科学者がほとんどいない。たとえば,人間の脳を研究してい
る研究者は,男性の頭脳は女性の頭脳より優れているという思い込みを抱いて
いる。男性の脳の平均重量が女性の脳の平均重量より大きいことが分ると,そ
れは男性のほうが女性よりもすぐれた知性を持っていることの証拠とされた。
さらに象の脳は人間(男性)の脳よりも重いという事実が指摘されると,有名
な科学者たちは,自分たちの知力は象並みであると認めたくないので,途方にく
れた(頭をかきむしった)。またある科学者は,重要なのは脳の重さと体重と
の比率であると示唆した。しかしこれでは悲惨な結果となる。即ち,女性は全
般的に男性よりも賢いことを示すことになると思われる。これではまったくう
まくいかない。そこで科学者たちは,重要なのは単なる重量ではなく,脳組織の
繊細さであると言った。これもいまだ推測上のことがらであるので,女よりも
男が優れているという仮定も可能である。

For the genuine man of science I have the highest possible respect. 
He is the one force in the modern world at once genuinely constructive
 and profoundly revolutionary. When the man of science is dealing with
 technical matters that do not touch upon the prejudices which he 
shares with the average man, he is more likely to be right than anyone
 else. But unfortunately very few men of science are able to retain 
their impartiality when they come to matters about which they feel 
strongly. For example, every male student of the human brain is 
persuaded in advance that men's brains are better than women's. When 
it was found that the average weight of a man's brain is greater than
 that of a woman's, this was held as proof of his superior 
intellectuality. When it was pointed out that an elephant's brain is
 even heavier, the eminent scientists scratched their heads since they
 could not admit that their wits were elephantine. Somebody suggested
 that the important thing is the proportion of the weight of the brain
 to the weight of the body. But this had a disastrous result : 
it seemed to show that women were, on the whole, cleverer than men. 
This would never do. So they said that it was not mere brute weight 
that mattered but delicacy of organisation. As this was still a matter
 conjecture, it could be assumed to be better in men than in women.

 ・・・  一般大衆は科学者の誰を信用してよいか分らない。従って,科学者が
個人的に強い偏見を持っていることがらについて確信ある意見を述べるのを聞
いたならば,まず疑がってかかった方が賢明である。科学者は超人ではなく,わ
れわれ同様に過ちを犯しやすい。

... The general public cannot tell which among scientists is to be 
trusted and will therefore be wise to be very sceptical whenever they
 hear a man of science giving a confident opinion about a matter on 
which he has strong prejudices. Men of science are not supermen and 
are as liable to error as the rest of us.
  Source: Mortals and Others, v.1, 1975.


■「(ほぼ日刊)ラッセルの英語」
      n.1631〜1635 を発行しました
  以下,1つだけ再録します
       n.1635/3650(2019年8月2日 金曜日)
    R英語_類義語シリーズ g09 

★ hard / difficult

   https://russell-j.com/beginner/r_ruigigo-g09.htm

最所フミ(編著)『英語類義語活用辞典』(pp.185-187)

【"hard":「残酷な」など,"difficult"にない意味を数多くある。】
【"difficult":困難な,難しい。】

(1-1) He is a hard man.
[彼は人情に動かされない(冷酷な)男だ。]

(1-2) He makes it very hard for me.
[彼は私に意地悪い態度をとる。]

(2-1) He is a difficult man.
[彼は付き合いにくい(取り扱いにくい)人物だ(注:複雑な人格を暗示してい
る)。]

(2-2) He is very difficult to get along with.
[彼は性格的につきあいにくい人物だ(注:付き合いにくいだけで、意地悪を
するというわけではない)。]


A.ラッセルの著作における用例
 
<用例1-1>
It is hard on a man to be born stupid, and, in a world of free 
competition, this initial misfortune will be aggravated by the fact
 that he will achieve no success. hard .
[生まれつき頭が悪いことはつらいことであり,また,自由競争社会では,この当
初からの不運は,彼が成功することはないという事実によって,いっそう悪化さ
せられる。]
 出典:ラッセル『アメリカン・エッセイ集』の中の「成功と失敗(自由競争
社会)」
     https://russell-j.com/JIYU-KYO.HTM

<用例1-2>
Their ardour would sweep away the cruelty and pain which we endure 
because we are lazy, cowardly, hard-hearted and stupid.
[彼ら(彼女たち)の熱情は、私たちが怠惰で、臆病で、冷酷で、愚かなため
に現在耐えている残酷さと苦痛を一掃してしまうだろう。]
 出典:ラッセル『教育論』第一部_教育の理想_第2章「教育の目的」
     https://russell-j.com/beginner/OE02-230.HTM

<用例2>
Men accustomed to difficult negotiations learn a kind of tenderness 
towards the vanity of others and indeed towards all their prejudices,
 which is infinitely shocking to those who make a cult of sincerity.
[他人との困難な交渉に慣れている人間は、相手の虚栄心に対する、いやむし
ろ各種の偏見に対する思いやりを体得するが、誠実さを第一と考える者にはそ
れは非常に不愉快なものである]
 出典:ラッセル『アメリカン・エッセイ集』の中の「臨機応変の才(気転を
働かせること)について」
     https://russell-j.com/TACT.HTM


B.他の参考例

<参考例1>
You're a hard woman.
 出典:Longman Dictionaryof Contemporary English, new ed.

<参考例2>
It was a difficult situation for the government.
[それは政府にとって難しい局面だった。]
 出典:『VITAL3000英単語・熟語』, p.65


★「ラッセルの言葉(Word Press 版)v.2, n.1375〜1379

1)n.1375:R『権力−その歴史と心理』第7章 革命的な権力 N.3
         https://russell-j.com/wp/?p=4776

2)n.1376: R『権力−その歴史と心理』第7章 革命的な権力 N.4
      https://russell-j.com/wp/?p=4782
 
3)n.1377: R『権力−その歴史と心理』第7章 革命的な権力 N.5
          https://russell-j.com/wp/?p=4786

4)n.1378: R『権力−その歴史と心理』第7章 革命的な権力 N.6
       https://russell-j.com/wp/?p=4789

5)n.1379: R『権力−その歴史と心理』第7章 革命的な権力 N.7
       https://russell-j.com/wp/?p=4792
 

★「ラッセルの言葉_画像版」

 日本語 version : n.1000j-1006j を投稿
 英 語 version : n.1000e-1006e を投稿

  一つだけ再録します 祝、1000号 (July 28, 2019)
      https://russell-j.com/smart_r366/r366g_j1000.html

【三浦俊彦『バートランド・ラッセル−反核の論理学者』出版協賛企画 n.6】

 「甘粕大尉による大杉栄、伊藤野枝の惨殺」

『バートランド・ラッセル−反核の論理学者』(学芸みらい社刊)p.43で引用
されているラッセルの言葉です。

「私たちが会った中で本当に好ましく思った日本人は,唯一ミス・イトウ(注:
伊藤野枝、1895-1923)だけであった。彼女は若くて美しく,ある有名な無政府
主義者(注:大杉栄, 1885-1923)と同棲しており,彼女には(大杉との間に)息
子が一人いた。ドーラは彼女にこう尋ねた。
「当局があなたに何か危害を加えるんじゃないかと恐れていませんか?」
 彼女は喉もとに手をあてそれを横にひいて(首をはねられるまねをしながら)
言った。
「遅かれ早かれ,当局は私たちを殺害するだろうことはわかっています。」

We met only one Japanese whom we really liked, a Miss Ito. She was 
young and beautiful, and lived with a well-known anarchist, by whom 
she had a son. Dora said to her: 'Are you not afraid that the 
authorities will do something to you?' She drew her hand across her
 throat, and said: 'I know they will do that sooner or later.' 
 Source: The Autobiography of Bertrand Russell, v.2, chapt.3,
 More info.: https://russell-j.com/beginner/AB23-140.HTM

<寸言>
 1923年に起きた関東大震災の混乱にまぎれて、大杉栄と伊藤野枝は甘粕正彦
率いる憲兵隊に捉えられて虐殺された。そうして甘粕正彦は愛国者として讃え
られた。

 関東大震災の時には、「朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだ」というデマが流布
し、約5,000人が殺害されたといわれている。この数は不確かであるが、1,000
人単位で殺害されたことはまず間違いないであろう。
 日本の保守層やネット右翼などは、関東大震災時の朝鮮人虐殺や、第二次世
界大戦時における南京虐殺も否定する声が多い。
 第二次世界大戦で戦死した日本人は300百万以上という数字はよく言われる
が、日本人が殺害した外国人の数に言及することは皆無である。(ウィキペデ
ィアによると)中国人は1,000万〜2,000万人が戦死したと書かれているが、内
戦でもかなり亡くなっているが、日本の軍隊が殺害した数は、日本人の戦死者
より多いと想像される。

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(2) ラッセルに関する記述や発言等 
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 今回もお休み

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 編集後記 trivials 3つ
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 夏休みモードです。
 
 次回(8月10日)は発行しますが、8月17日は休刊とします。
 日刊版のメルマガを 8.11〜8.17まで 夏休み休刊とするためです。

(1) ラッセル研究論文紹介
 1) 紀平英作「バートランド・ラッセルがみた1920年代初めの中国(上)」
     及び 同(下)
   『思想』(岩波書店)n.1142(2019年6月号)pp.83-102
          及びn.1143(同7月号)pp.177-196

 PDF版を次の場所においてあります。著作権の問題があるので、パスワー
 ド入力(1872Y0518)が必要です。
   https://russell-j.com/cool/kihira_BR_China1920_0001.pdf
   https://russell-j.com/cool/kihira_BR_China1920_0002.pdf

 (上)の最初のところだけ引用しておきます。

  第一次世界大戦直後の中国を二人の世界t気哲学者が訪れていた。小論の
 主人公バートランド・ラッセル(1872-1970)がその一人であったが、彼に
 先立ち、1919年5月1日、ジョン・デューイ(1859-1952)が北京に到着し
 ていた。アメリカのコロンビア大学に学んだ北京大学教授・胡適(1891-
 1962)の招きを受け、一年の研究休暇をとっての中国滞在であった。


(2) 三浦俊彦『バートランド・ラッセル、反核の論理学者』の書影3点
   PDF版を下記においてあります。(表紙帯付き/同帯なし/裏表紙帯付き)
      必要な方はマウスで右クリックしてご自分のPCに保存してください。

         https://russell-j.com/miurat/images/cover1.pdf
         https://russell-j.com/miurat/images/cover2.pdf
         https://russell-j.com/miurat/images/cover3.pdf


(3) 同上、アマゾンの販売ページ

アマゾンで購入
                             (松下彰良)

 ★松下彰良(訳・編)『ラッセルの言葉366』
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■編集・発行:(松下彰良/まつした・あきよし)
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