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アドホック・エッセイ&備忘録 -目次

アドホック・エッセイ&備忘録 n.2(2003年10月21日)

バートランド・ラッセル(作)「形而上学者の悪夢」の中の引用について」

 先日、ラッセルの創作(ホラー小説?)、Nightmares of Eminent Persons and Other Stories(1954)のなかの The Metaphysician's Nightmares(形而上学者の悪夢)の拙訳をラッセルのホームページに掲載した。しかし、次の下りのなかの★~★の部分がよくわからず、前後関係から想像して適当な訳をとりあえずのせておいた。
 しかしもやもやが残ったままなので、原文のなかにそっと「どういう意味か分かる方は教えてください」という一文をしのばせておいた。(https://russell-j.com/NIGHT-M4.HTM)
Every moralist whose morality consists of 'don'ts,' ★every timid man who ''lets 'I dare not' wait upon 'I would' ''★, every tyrant who compels his subjects to live in fear, becomes in time a part of Satan.
 幸いなことによくみてくださっている方がいて、お二人からコメントをいただいた。そのなかの1人からは、これはシェークスピアのマクベスからの引用であるというアドバイスをいただいた。
 そこで、googleの検索エンジンを使い、「I dare not' wait upon 'I would マクベス」で検索したところ、訳はついてなかったが、マクベス夫人の名セリフということで、次のパラグラフが引用されていた。
Was the hope drunk
Wherein you dress'd yourself? hath it slept since?
And wakes it now, to look so green and pale
At what it did so freely? From this time
Such I account thy love. Art thou afeard
To be the same in thine own act and valour
As thou art in desire? Wouldst thou have that
Which thou esteem'st the ornament of life,
And live a coward in thine own esteem,
Letting 'I dare not' wait upon 'I would ← ★
 ここまでわかればほぼ解決されたも同然である。大学の生協書籍部にいき、岩波文庫版(木下順二訳)を入手し、該当の箇所を探した、すると、次のような訳がのっており、めでたく解決となったしだいである。
 アドバイスをしてくださったお二人にはあらためてお礼を申し上げたい。(2003.10.21)
マクベス夫人
 さっきまであなたを包んでいたあの望みごとは、酒のせいだったのですか? あれから眠りこんでいま目を覚ましてみたら、あの時は平気で考えていたことに震えあがって蒼くなったとおっしゃるのですか?
 これからは、あなたの愛もそんなものだと考えることに致しましょう。思いの中では結構勇敢だのにそれを実行に移すのは怖い。この世の華だと見た王冠をあれほど欲しがりながら、自分はどうせ憶病者だときめこんで、「やってみせる」という口の下から「やめておこう」(と)、脚を濡らさず魚を取りたがる猫のように生きて行こうとおっしゃる,のですね。