[紹介] 河合秀和「バートランド・ラッセル(著),河合秀和(訳)『ドイツ社会主義』及び『ロシア共産主義』について
* 出典:『出版ダイジェスト』1990年3月1日号掲載)* 原著:Bertrand Russell : German Social Democracy, 1896;The Practice and Theory of Bolshevism, 1920.
* 河合秀和は当時、学習院大学教授
十九世紀を一つの歴史的時期として際立たせたものが、社会主義思想の誕生であったとするならば、二十世紀はその死で特徴づけられることになるのであろうか。結論を出す前に、まさにその(社会主義)誕生の時に書かれた、哲学者ラッセルの二冊の本、分析と批判と予見の書を是非読んでほしい。
一九二〇年には、ラッセルは(英国)労働党代表団のオブザーヴァーとして、革命ロシアを訪問し、レーニン、トロッキーとも会った。ロシアは我々の側に来るのか。結論として著わされたのが、『ボルシェビズムの実践と理論』という標題をもつロシア共産主義論である。ボルシェビズムへの賛否両論を明確に要約しながら、飢餓と貧困から生まれた革命理論の不寛容と狂信が、同胞の苦悩と悲惨にも盲目な国家のテロルを生むことを、懐疑家ラッセルは見とおした。
社会主義とは何であったのか、そして何でないのか。これについて経験論的に語れるラッセルの成熟に、社会はようやく到達したようである。
(みすず書房刊、予価『ドイツ社会主義』1,648円、『ドイツ社会主義』1339円)