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ラッセル関係書籍の検索 ラッセルと20世紀の名文に学ぶ-英文味読の真相39 [佐藤ヒロシ]

バートランド・ラッセル「還元公理」

* 出典:牧野力(編/著)『ラッセル思想辞典
* Source: Principia Mathematica, v.1, 1910


 以下は、藤川吉美 氏(故人/当時・成蹊大学講師)によるまとめなので、英文はつけていません。


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 この公理は、二つの違った主語違った述語をもたねばならない、というライプニッツ (G.W.Leibniz, 1646~1716)のいわゆる「無相同等律」を拡張したものであり、「 a 関数のある型、たとえば、γ があって、与えられた任意の a 関数は必ずその型のある関数と形式的に等値になる」ということを意味している。つまり γ 型を適当にとるならば、与えられたもの a を変数値にとるような関数 φ に対して、 γ 型の中には φ と形式的に等値なる関数 φ が必ず存在する、ということを意味していて、この公理が導入されると、この型の中の関数をそれに対応する外延的関数を定義するのに用いることができる。つまり、すべての a 集合、a 関数で定義されたすべての集合に関する命題は、γ 型の a 関数に関する命題に還元することができる。外延的な関数の関数だけを考えているとき、この仮定が成立しなければ、 すべての a 関数という不可能な概念を必要とするような結果を導く。これは数学的帰納法にとって、実にゆゆしい問題である。階型理論(theory of types)によって集合論の体系を展開するには、こうした「還元公理」
 ∃FVx(F!(x)≡G(x))
を導入して、任意の命題関数 G に対して外延を等しくするような「述語的」(predicative)な命題関数の存在が要請される。しかし、ラッセルによれば、「還元公理」は論理上必須のものではない。(Introduction to Mathematical Philosophy, 1919, section 17 参照)