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ラッセル関係書籍の検索 ラッセルと20世紀の名文に学ぶ-英文味読の真相39 [佐藤ヒロシ]

バートランド・ラッセル「知識と知性」

* 原著:Sceptical Essays, 1928, chapter 12
* 出典:牧野力(編)『ラッセル思想辞典』所収


 自分の頭で考える人間は国家にとって扱いにくい。・・・。(そこで)プラトンの言葉で言えば、(国政を司る)賢人のみが自分の頭で考えるべきであり、一般国民は羊の群のようにただ指導者に従うべきである、と言うことになる(いわゆる、プラトンの哲人政治)。この教義は、しばしば無意識のうちに、政治的民主主義の導入後も存続し、すべての国の教育制度を根本から損なってきた。・・・。
 知性を伴わないで知識(という名の情報)を与えることに最も成功している国(注:1928年当時)は、近代文明に一番最後に参加した日本である。日本の初等教育は教える見地から見ると称賛すべきものだと言われている。しかし、初等教育には他の目的が含まれている。それは、日本の近代化以前よりも強化された天皇崇拝を生徒に教えることである。
 国家は、すべてを独占する必要から、知性の向上や思想の自由への主な障害の一つになりやすい。知性への最大の障害の一つは軽信性で、今日その害は、今までより大きい。今流行しているうそや軽信をとりあげ、教材に利用すると、軽信の害を悟らせうる。有能な教師なら誰にも可能な方法で、知性を向上させて、道徳的欠陥を救う。説教と訓戒は偽善を思いつかせるから、進歩を妨げる。判断力を与える知性の教育を重視したい。
It is not desired that ordinary people should think for themselves, because it is felt that people who think for themselves are awkward to manage and cause administrative difficulties. Only the guardians, in Plato's language, are to think; the rest are to obey, or to follow leaders like a herd of sheep. This doctrine, often unconsciously, has survived the introduction of political democracy, and has radically vitiated all national systems of education.
The country which has succeeded best in giving information without intelligence is the latest addition to modern civilisation, Japan. Elementary education in Japan is said to be admirable from the point of view of instruction. But in addition to instruction it has another purpose, which is to teach worship of the Mikado - a far stronger creed now than before Japan became modernised.