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ラッセル関係書籍の検索 ラッセルと20世紀の名文に学ぶ-英文味読の真相39 [佐藤ヒロシ]


バートランド・ラッセル「ナショナリズムの二面性」

* 原著:New Hopes for a Changing World, 1951, chapter 16: Ideas which have become obsolete
* 出典:牧野力(編)『ラッセル思想辞典』所収


 世界が区分されて生れた'国家'には、文化面と政治面との二つの活動がある。
 文化的な面を遺憾とする理由は何もない。各国民はそれぞれ異なった価値をもつ。文化的に全世界、全人類が全部一色でなければならない理由は全くない。'文化的多様性'に、当然政治的敵愾心を含むべしとの理由もない。
 英仏両国は、七百五十年間、相互の利益の不一致を理由に戦争してきた。そして遂に、その考え方の誤りを悟り、一八一五年以降は友邦である。これは、他の国々の場合も同じで、古くさい心の習慣の虜になっているからだけで、他に何の理由もありえない。
 もし互いに相手に不信、敵対感を抱かなければ、相互の軍事費は節約できるから、両国の相互協力による利益を実証できる。もちろん原水爆の恐怖も消える。一方に利己的動機があれば、競争衝動から優越しようと軍備増強に走るのは明らかだ。そして、軍備競争に歯止めがかからなくなる。遂に自国が正義の御旗を掲げる道徳的十字軍だとまで思い込む。その国自身絶対実践できない高度な倫理的思想を高く掲げ、武装に走る。これは、知的人間(ホモ・サピエンス)己の無知を隠そうとする全く一種の心理的仮装(カモフラージュ)に過ぎない。
 人間性を変えることは不可能だと断言することは、無知な者が己の無知の深さを隠す中身のないありふれた考え(言葉)の一つである。この中身のないつまらない言葉を繰り返す人は、大人の性格を構成する先天的な部分と後天的部分とについての心理学者達の研究成果を全く知らないのである。
 現代世界の大きな危険の一つは、新しい技術進歩がいよいよ知性を求めてやまないのに、その知性を嫌う点にある。知性豊かに暮らそうとしない点にある。ナチスはユダヤ人を皆殺しにすれば、不況は解消すると考え、ロシア人は富裕階級を撲滅すれば、万人が富裕になれると考える。集団が異なれば、利害も異なることになるのは、愚かな感情から起るのであって、他の物的ななにものからでもない。この誤りを正せるのは知性を豊かにするしかない。・・・。
・・・。求められている精神改造は困難なことであり、すぐに成し遂げられないであろうが、その必要性が教育者に認められ、若者が過去の略奪の世界の市民ではなく、新しいこの世界の市民として養成されるならば、一世代の内に遂げられるであろう。・・・(注:イラストは、ラッセルの The Good Citizen's Alphabet, 1953 から)

The dictum that human nature cannot be changed is one of those tiresome platitudes that conceal from the ignorant the depths of their own ignorance. None of those who utter this platitude know anything about the investigations of psychologists into what is congenital and what is acquired in the character of an adult. ...
... The mental change required is difficult, and will not be achiieved in a moment, but if the need is recognized by educatiors, and if the young are brought up as citizens of this world and oto of a byfone world of fedatory warriors, the cange can be achieved within a generation, ...
Source: Bertrand Russell : New Hopes for a Changing World, 1951, chapter 16: Ideas which have become obsolete
 More info.: https://russell-j.com/beginner/NATION-2.HTM