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ラッセル関係書籍の検索 ラッセルと20世紀の名文に学ぶ-英文味読の真相39 [佐藤ヒロシ]

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バートランド・ラッセル「善い人生への近道」

* 原著:Bertrand Russell : What I Believe
* 出典:牧野力(編)『ラッセル思想辞典』所収



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 愛によって力づけられ、知識によって導かれる「善い人生(良い生活)」は多くの'社会的な条件'を必要とし、それらの実現なしには不可能である。
 大部分の革命指導者達は、悲惨、残酷、堕落、専制君主、僧侶、資本家などによる諸悪の根源を廃絶すれば、永遠に幸福に暮らせると考えた。この(西欧社会に多く見られる)希望的な判断の発想が起きた究極的根源は、救済への道がある日突然の大変動による変化から生れるとする'キリスト教の教義'から出ている。
 私は、革命を絶対に不必要と言っているのではなく、革命が決して黄金時代への近道ではない、と言いたい。個人的にせよ、社会的にせよ、善い人生(良い生活)への近道はない。知性と自制と同情なしで、善い人生(良い生活)は建設されない。これは量的な問題で、徐々の改善、若い時代の訓練、教育上の実験等の問題である。性急さだけが、突発的な改革の可能性を信仰するように人心を駆り立てるのである。可能な徐々の改革やその達成法は、今後の科学の問題である。また、科学者達がその成果に酔って人類の将来を犠牲にせず、彼らが外部世界への物理的な力と同様に彼ら自身の情熱に対して支配力を持てば、遂に人類は善い人生(良い生活)を達成する自由を握れるだろう。