バートランド・ラッセル「言論出版の自由」
* 原著:Fact and Fiction, 1961, part II, chapt. 2 & 5* 出典:牧野力(編)『ラッセル思想辞典』より
下記に牧野力氏の要旨訳ですが、かなり手を入れました。なお、以下は Fact and Fiction 第二部の第2章と第5章から採取したと書かれていますが、最後の一行の原文が見つけられません。従って、「片手落ち」というような不適切な表現もありますが、修正できません。
(諸)事実に関して論争があるような場合、一般市民のいかなる者も苦労しないで、真実を見つけ出すことが可能であるということは、民主主義において必須の要素です。(また)そのためには、民主主義が知る権利とか、報道の自由(freedom of the Press :「出版の自由」ではなく)を必要であることは、西欧においては一般的に(幅広く)認識されています。官憲(authorities 政府当局)は、ただ単に自分達が好まない(好ましくと思わない)との理由で、情報を勝手に(at liberty)抑圧してはいけません。
しかし、報道の自由は必要ですが、(それだけでは)十分ではありません。重大な誤った報道を迅速に訂正する方法も存在しなければなりません。この目的のためには、名誉毀損の仕組みは不十分です。その理由は、一つにはそれはゆっくりしたものであるからであり、一つには名誉毀損が適用できない場合がいろいろあるからです。・・・
"言われ損"や"泣き寝入り損"式の片手落ちの事象に無関心な社会では、真の言論・出版の自由は育ちません。
But freedom of the Press, though necessary, is not sufficient. There must be quick methods of correcting gross misstatements. For this purpose the machinery of libel actions is quite inadequate, partly because it is slow, partly because it is expensive, and partly because there are cases when it is inapplicable. ...)