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ラッセル関係書籍の検索 ラッセルと20世紀の名文に学ぶ-英文味読の真相39 [佐藤ヒロシ]

バートランド・ラッセル「夫婦以外の性関係」

* 出典:『拝啓バートランド・ラッセル様_市民との往復書簡集>』
目 次


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'...。1929年に出版された『結婚と道徳』の中で書かれているようなやり方で、結婚した人達が、ともに幸福な生活を送り、子どもたちを健全に育むことができると、あなたは現在でも考えておられるでしょうか。それともその後30年の間に、考えはいくらか変わったでしょうか。・・・。私の妻は、あなたの哲学を信奉しています。そうして彼女は、私達の結婚をあなたの哲学にもとづいて続けたがっています。・・・。しかし私は、この幸福な結婚という点に関して、夫婦それぞれが「婚外の性関係」をもったまま幸福な結婚生活が送れるという点(考え方)には賛成できません。しかし、私達は子どもたちを心から愛していますので、どちらも離婚は望んでいません。'

ラッセルからの返事(1959年6月10日付)

拝復
・・・。私は、あなたのおっしゃるバンタム・ブックス版の『結婚と道徳』を手に入れておりませんが、あなたのご質問の趣旨は理解できると思います。私は現在、決定的な意見は何一つ持っていません。私は、おおざっぱにいって次のように考える傾向があります。

 もし、「その2つの(愛する男女の)組み合わせ」が誠実なものであれば、そのうちの1つ(の組み合わせ)かあるいは2つ(の組み合わせ)ともが不誠実である場合よりも、結婚生活は、より幸福なものとなり得ます。同時に、夫婦間に強い愛情が残っていれば、姦通行為がありましてもやはり結婚生活を継続することは価値あるものだと思います。嫉妬心が良い夫婦関係を不可能にするその程度は、個人個人でかなり違います。それゆえ、私は一般にあてはまるようなルールを作ることはできないと思います。子供達のために結婚を継続すべきかどうかという問題は、その両親の間の親密さの度合いによって決まると考えます。もし彼等がお互いを嫌い、喧嘩しがちであるならば、離婚のほうが子供達のためにはよりよいと思います。しかし、もし彼等が親密な関係を保つことができるならば、通常、結婚をそのまま継続していくことのほうがよりよいでしょう。とはいっても、その夫あるいは妻のどちらかが、夫婦以外のほかの人間に対し、深くかつ押さえきれない愛情を懐いている場合には、その気持ちに抗するのは大変害になると思います。少しも良いことはありません。
 以上すべて、いくらか漠然としていて、仮説にすぎませんが、私にはもっと明確に、十分確信をもって、言うことはできません。
 敬具 バートランド・ラッセル

'... Do you still feel that married people can live happily together and raise stable children in the manner you prescribed in 1929 (in the Bantam Books edition of Marriage and Morals).... Or is it possible that your ideas have changed somewhat during the past thirty years?... my wife believes in your philosophy and would like our marriage to continue on that basis.... I disagree on this point of a happy marriage with both parties having extra-marital sexual relations. Neither of us want a divorce because we both love the children very much....

Dear Sir, (June 10, 1959),
... I have not got the edition of Marriage and Morals to which you refer, but I think I know the purport of the question that you ask. I have not at present any very decided opinion. What I incline to think is roughly as follows:
A marriage has much greater chances of happiness if both parties are faithful than if one or both are not. At the same time, where a strong affection survives between husband and wife, I think it should be possible for the marriage to remain valuable in spite of fidelity. Individual differ enormously in the degree to which jealousy makes good relation impossible, and for this reason, I do not think that one can make general rules. ... I think, however, that when the husband or the wife feels a very deep and very overwhelming love for another person, there may be so much harm in resisting it as to outweigh any possible good. ...