* 『カリバー旅行記』のテキスト(青空文庫より)
コント(Auguste Comte,1798-1857:フランスの哲学者・社会学者/右切手肖像画)を読んだが,それほど高く評価しなかった。ミル(John Stuart Mill, 1806-1873/ミルはラッセルの名付け親)の「経済学」と「論理学」を読んで,念入りな要約を作った。カーライル( Thomas Carlyle,1795-1881)も大変興味深く読んだが,宗教を擁護するための彼のまったくの感傷的な議論は,完全に拒否した。なぜなら,私は当時-それ以来ずっと見解は変わっていないが-神学上の命題は,科学の命題に要求される証拠と同様の証拠がないのであれば受け入れる(容認する)べきではない,という見解を抱いていたからである。ギボン(Edward Gibbon,1737-94:イギリスの歴史家)と,ミルマン(Henry H. Milman,1791-1868 英国の歴史家)の「キリスト教史」と,それから'不穏当な部分'を削除されていない「ガリヴァー旅行記」を読んだ。「ガリヴァー旅行記」の中の人間の形をした野蛮人ヤフーについての記述は,私に深い影響を与え,(それ以後)私は,その見地に立って人間を見るようになった。(参考:沼正三(作)『家畜人ヤプー』) こうした精神生活のすべてが,胸奥深くしまいこまれていたことを理解しておいてもらわなければならない。そのわずかな徴侯すら,他人との交際において表わさなかった。社交上私は,はにかみやで,子供っぽく,ぎこちなく,行儀が良く,善良であった。苦痛を感ぜず,臆することなく社交のできる人を,いつも羨ましく見守っていたものである。 カッターモールという名前の青年がいた。私が思うに,彼は無作法な人間であったに違いない。その彼が,スマートな女性(注:smart はアメリカ英語の「頭のよい」ではなく?,「活発な?」)と,ごく親しそうに,また明らかに彼女を喜ばせながら一緒に歩いているのを注視した。それで私は,私が関心を持つ女性を喜ばせるような仕方で振舞うことは,決して,決して,決して身に着けるべきではない,と当時考えたものである。 |
Throughout this time, I read omnivorously. I taught myself enough Italian to read Dante and Machiavelli. I read Comte, of whom, however, I did not think much. I read Mill's Political Economy and Logic, and made elaborate abstracts of them. I read Carlyle with a good deal of interest, but with a complete repudiation of his purely sentimental arguments in favour of religion. For I took the view then, which I have taken ever since, that a theological proposition should not be accepted unless there is the same kind of evidence for it that would be required for a proposition in science. I read Gibbon, and Milman's History of Christianity, and Gulliver's Travels unexpurgated. The account of the Yahoos had a profound effect upon me, and I began to see human beings in that light.
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