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バートランド・ラッセル自伝 第1巻第2章 - 青年期の関心 (松下彰良 訳) - The Autobiography of Bertrand Russell, v.1

前ページ 次ページ 第1巻 第2章(青年期)累積版 総目次
* Adolescence(青年期):研究社英和大辞典によると,青年期とは,男子の場合は14~25歳,女子の場合は12~21歳までの成長期(法律上は,成年にたっするまで)とある。『ラッセル自伝』第1巻第1章「幼少時代」も13歳までのことが書かれている。
* フロイト(Sigmund Freud,1856‐1939)の発達段階説: 口唇期(Oral Stage):0~1.5歳 /肛門期(Anal Stage):1.5~3歳/男根期(Phallic Stage):3~6.5歳 /潜伏期(Latency Period):6.5~11.5歳/性器期(Genital Phase):11.5 歳以降
* Freud Museum London



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 私の幼少期は,概して,幸福で,まっすぐなものであり,接触するようになったほとんどの大人たちに対し愛情を感じた。私は,現代児童心理学で「潜伏期」(6.5~11.5歳頃)と呼ばれている時期に達した時に,きわめてはっきりとした変化が起こったことを記憶している。この時期に,スラング(俗語)を使用したり,どんなことにも感動しないふりをしたり,概して'男らしく'ふるまったりすることを,楽しむようになった。私は,ラッセル家の人々を軽蔑するようになり始めたが,その主な理由は,彼らが,スラングを極端に恐れたり,木に登るのは危険だというような愚かな考えをもっていたからである。あまりに多くのことが禁じられていたので,私は人を欺く習慣を身につけ,それは21歳(訳注:日高訳では22歳になっている。英国では21歳が成人。)まで持続した。どんなことをしようと,自分だけの秘密にしておいた方がよいと考えることが,私の第2の天性となり,そのようにして形づくられた,物事を隠しておこうとする衝動を完全に克服することはできなかった。私は今でもなお,誰かが部屋に入って来ると,読んでいるものを隠そうとする衝動や,また,たいていの場合,私はどこへ行っていたか,また何をしていたか,何も言わないようにしようという衝動がある。一連のおろかな禁止の間をくぐって,自分の進路をみつけなければならなかった数ヶ年を経るうちに形作られたこのような衝動を克服することは,ただある種の意志による努力によってのみ可能であるにすぎない。
 青年期の数年間の私は,とても孤独であり,不幸であった。感情生活においても,知的生活においても,ラッセル家の人々に対して,頑なに秘密を保つことを余儀なくされた。私の関心は,性と宗教と数学の間にわけられた。私は,青年期に性に没頭したことを想い出すと不愉快になる。あの頃私が,どういうふうに感じていたかを思い出したくない。しかし,こういうふうであればよかったといった希望的なことはのべずに,事実あった通りを以下述べるよう最善を尽くしてみよう。

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My childhood was, on the whole, happy and straightforward, and I felt affection for most of the grown-ups with whom I was brought in contact. I remember a very definite change when I reached what in modern child psychology is called the 'latency period'. At this stage, I began to enjoy using slang, pretending to have no feelings, and being generally 'manly'. I began to despise my people, chiefly because of their extreme horror of slang and their absurd notion that it was dangerous to climb trees. So many things were forbidden me that I acquired the habit of deceit, in which I persisted up to the age of twenty-one. lt became second nature to me to think that whatever I was doing had better be kept to myself, and I have never quite overcome the impulse to concealment which was thus generated. I still have an impulse to hide what I am reading when anybody comes into the room, and to hold my tongue generally as to where I have been, and what I have done. It is only by a certain effort of will that I can overcome this impulse, which was generated by the years during which I had to find my way among a set of foolish prohibitions.
The years of adolescence were to me very lonely and very unhappy. Both in the life of the emotions and in the life of the intellect, I was obliged to preserve an impenetrable secrecy towards my people. My interests were divided between sex, religion, and mathematics. I find the recollection of my sexual preoccupation in adolescence unpleasant. I do not like to remember how I felt in those years, but I will do my best to relate things as they were and not as I could wish them to have been.