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バートランド・ラッセル「知識と知恵」n.4 : 知恵の本質 - Bertrand Russell : Knowledge and Wisdom (1954)

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 私は,知恵の本質ここ(この場所)と今(現在)の暴政からの可能な限りの解放(できるだけ解放されること)である、と考える。我々人間は,感覚(器官)の利己主義なしですます(まぬがれる)ことはできない。視覚,聴覚,触覚は(注:もちろん味覚や臭覚も),我々自身の肉体と結びついており非個人的なものにすることはできない。我々の感情(情緒)は,同様に,我々自身(自分自身)から出発する。幼児は餓えや不快を感ずるが,自己の肉体的条件以外には影響されない(注:親が言葉で何か理解させたり、影響を与えたりしようとしても、幼児は親が言っていることをまだ理解できないので、影響を受けないということ)。 年がたつにつれて,幼児の感覚器官が扱える範囲(能力の地平線)は次第に広がってゆく。彼の思考や感情が個人的であることが少くなり,自分の肉体的状態に関心をもつことが減るに従って,幼児の知恵は次第に増していく。もちろんこれは程度問題である。世界を完全な公平さでみることのできる人はいない。即ち、もしもそれができるとすれば,その人はほとんど生き続けることができないだろう(注:なぜなら、身に迫った危険を察知できないため)。しかし,一方では、時代や場所がいくらか隔っている物事について知ったり,他方では,そのような物事に我々の感情における正当な(適切な)重みを与えたりすることによって,公平無私に絶えず近づくことが可能である。知恵の増大とは,このような公平無私への接近である。
I think the essence of wisdom is emancipation, as fat as possible, from the tyranny of the here and now. We cannot help the egoism of our senses. Sight and sound and touch are bound up with our own bodies and cannot be impersonal. Our emotions start similarly from ourselves. An infant feels hunger or discomfort, and is unaffected except by his own physical condition. Gradually with the years, his horizon widens, and, in proportion as his thoughts and feelings become less personal and less concerned with his own physical states, he achieves growing wisdom. This is of course a matter of degree. No one can view the world with complete impartiality; and if anyone could, he would hardly be able to remain alive. But it is possible to make a continual approach towards impartiality, on the one hand, by knowing things somewhat remote in time or space, and on the other hand, by giving to such things their due weight in our feelings. It is this approach towards impartiality that constitutes growth in wisdom.
(掲載日:2016.02.06/更新日:)