20世紀の伝導者・バートランド・ラッセル(NHK/BBC「知への旅」シリーズ)
先日このホームページでお知らせしましたように、(1998年)5月23日夜、NHK教育テレビの「知への旅」シリーズ(英国BBC及び米国A&Eネットワーク共同製作)でB.ラッセルが取り上げられました。ご覧になった方はどれくらいおられたでしょうか。
40分ほどでラッセルのような複雑な思想家を一般の人にもわかるような仕方で紹介するためには、あのようにラッセルの行動や性格についてのエピソードの羅列になるのはやむを得ないかもしれませんが、少しものたりなく思ったのは私だけでしょうか。(因みに、NHKが放送したのは、英国等で放送された1時間半ほどのものを半分に縮めたものだそうです。)
確かに余りおめにかかれない映像はいろいろありました。しかし、ラッセルの哲学は、『西洋哲学史』がとりあげられただけであり、それもベストセラーになって、困窮状態であったが生活が楽になったといった紹介のされ方だけです。ラッセル=アインシュタイン宣言も、パグウォッシュ会議も紹介されていません。NHKの担当者の偏見あるいは好みが反映されてしまったのでしょうか?
それに誤解を招きそうなラッセルの孫のインタビューもありました。その孫は、ラッセルのおかげで妹(=ラッセルの孫)のLucy Russell が焼身自殺したような言い方をしていましたが、視聴者は孫の言うことだから間違ったことは言ってないだろうということでそのまま信じてしまう危険があると感じました。ラッセルはベトナム反戦運動にかなりのエネルギーを注ぎましたが、なかなか光が見えてこずに、ラッセルを尊敬していた Lucy Russell は、ベトナムに介入していた米国に抗議して自殺をした、というのがより真相に近いと思われます。日本の新聞の小さなコラムにもそのように書かれていました(「ラッセル卿の孫娘、焼身自殺-インドシナ戦に絶望?-」)。
不満は残りましたが、この放送はあくまでも'ラッセル理解の一助'としては有益であると限定して受け取れば、目くじらをたてることはないだろうと思われます。
(1)番組名 「20世紀の伝導者・B.ラッセル」(「知への旅」シリーズ)
(2)放映日時 (1998年)5月23日(土)、23:45~0.29
(3)ソース 英国BBC・米国A&Eネットワーク共同製作(1997年)
(4)その他 ビデオに録画しました。(いずれデジタル化して、ご希望の方に提供したいと思っています。)