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ラッセル『結婚論』(松下彰良・訳)

Marriage and Morals, by Bertrand Russell

(London; Allen & Unwin, 1929)

第19章「性と個人の福祉」



総目次

第19章 性と個人の福祉 イントロ累積版

  1. 本章では,性と性道徳が個人の幸福と福祉に及ぼす影響について,前のいくつかの章で述べたことを要約する(要点を繰り返す)つもりである。
  2. サディズムもマゾヒズムも両方とも,穏やかなかたちでは正常なものであるが,有害な表れ方をした場合は,性的な罪悪感と結びついている。
  3. 幼年期と少年期(幼少年期)は,人生において,いたずらや腕白や禁じられた行為をすることが自然で,自発的なものであり,行きすぎないかぎりは嘆くにあたらない時期である。
  4. 子供の生活を支配するべきものは,罪悪(感)や,羞恥(心)や,恐怖(心)ではない。
  5. 次の段階の,思春期においては,因習的な性の取り扱いから生じる不幸は,子供時代よりもいっそう大きい。
  6. 思春期は,周知のように,神経障害がよく起こり,普段はいつも精神が安定している人が,まったく逆(精神不安定)になりやすい時期である。
  7. 大部分の若者(青年)は,大人になりたての頃,性に関してまったく不必要な悩みと困難を経験する。
  8. 現状では,生涯にわたって未婚のままでいなければならない多数の女性にとって,因習的な道徳は苦痛であり,また,たいていの場合,有害である。
  9. 結婚(制度)は,因習的に許されている唯一の性のはけ口ではあるが,それ自体,硬直した道徳律から害を受けている(苦しんでいる)。
  10. 全てこういうやり方で,幼年時代から,思春期,青年期を経て,結婚にいたるまで,我々は古い道徳が恋愛(love ここでは男女間の愛情)を毒する(損なう)のを許してきており,それは,恋愛を憂鬱,恐怖,相互の誤解,悔恨,精神的緊張で満たし,(古い道徳は)性の肉体的衝動と理想的な恋愛の精神的な衝動との二つの領域に分離し(separate into),前者を獣的に,後者を不毛のものにしてしまった
第20章 人間的価値における性の地位